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32にしおりをはさみました!
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32
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先輩が居なくなった廊下をボーっと眺め続けた
本当に‥願う
宮野先輩が幸せになれるように
宮野先輩の笑顔は絶対に誰かの心に届くから‥
先生の優しさも‥
俺じゃない誰かにきっと届く
先生が持つ1人分の幸せは、きっと先生に大切にされる人に届くから‥
「‥泣きそうな顔でどうした」
「!?」
「‥」
近くから聞こえた声にビクリと体が反応した。見上げればいつの間にか俺の近くに立っていた稔さんと目が合う。
血の気が引いた
会いたくなかった
教室に居る限り会わなきゃいけないけど、2人きりでなんか会いたくなかった。
でも‥話しをしなきゃいけないのは分かってる
話しをしたら本当にもう‥終わりだ
「あ‥なっ何でもないっです」
「永久」
「なっ何ですか」
「体調は?」
「‥もう元気ですよ」
「そうか」
そう言って足元に視線を下ろす先生のそれを辿るように自分も足元を見る。
誰も居ない教室は息を飲む程静かで。カキーンと、金属バットがボールを捉えた野球部の音がやけに耳に響いた。
「永久」
「‥?」
「少し‥考えさせて」
「‥え?」
「少し‥俺にも考える時間頂戴」
「‥」
「だから、それまでは今まで通り‥ちゃんとアパートに帰れ」
「‥」
「返事」
「‥分かった」
「よし。‥で、何で泣きそうな顔してたの」
俺を通り過ぎ教卓の上でガサガサとプリント広げる先生をちらりと見てから視線を反らす。
「‥関係ないだろ」
「まあ‥関係ない事なら関係ないな」
「意味わかんねえよ‥」
「学年一位のクセに馬鹿だな」
馬鹿とか言いやがった
勉強が出来ても馬鹿扱いか‥
「‥先生」
「んー?」
気の入ってない返事をする先生はプリントを見ながら何かを書き込んでいるけど、カツカツとペンと机がぶつかり合う、テストの時のような緊張感が俺を取り囲んだ。
「泣いてごめん。朝‥出てってごめん‥」
「‥」
書き込むボールペンの走る音が消えてこちらを見る気配がしたけれど、俺が先生を見る事はない。
「勝手に休んでごめん」
「‥」
「爺ちゃんと婆ちゃんに‥マメに連絡してくれてありがとう」
「‥永久」
「でも‥」
これは言っとかないといけない。
そうじゃない‥
また泣く前に逃げるだけだ。
「でも勝手に写真撮るのはどうかと思うよ?」
「‥あぁ、言っちゃったのか」
「言っちゃったのかじゃねーよ!俺の寝顔とかっ桃と壱まで勝手に!」
「‥」
「爺ちゃんとメル友とか聞いてねーし!それに!なんだよっ、必ず幸せにしますとかっ!」
「!」
出てきた言葉はつらつらと言わなくてよかった言葉までを並べて、荒いでいく声が不安定な俺をさらけ出す。
「爺ちゃんと婆ちゃんにもちゃんと気を使って!報告して!大切にして!」
「‥」
「そのくせ俺にっ、っ!‥くそッ」
ハッとした
これ以上‥
ここに居たら取り返しのつかない事まで言ってしまいそうで
机に置いていた鞄を乱暴に取り教室を走って出る。
傷付けたいんじゃない
責めたい訳でもなかった
嬉しかったよ
心配‥掛けるのは悪い気ばかりだったけど、申し訳ないと思ったけど‥でも嬉しかった。
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