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episode.103 事情にしおりをはさみました!
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episode.103 事情
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〜琉side〜
朝、恋にあからさまに避けられた琉は頭を悩ませていた。
恋は確実に小雪の発言を気にしている。
契約恋愛だという話を、琉は敢えて言わなかった。
恋を混乱させたくなかったし、何よりそれは琉の願望でもあった。
契約ではなくて、恋とまっすぐに向き合い、恋愛したい。
でもそれは結果的に、恋にどのような影響を与えてしまったのか、琉には計り知れなかった。
結局、小雪が琉にべったりで、恋と話す暇もなく、昼ご飯も食べ終えた頃に、もう一度インターフォンが鳴った。
恋が玄関に向かい、すぐにリビングに恋と紘が入ってきた。
「お邪魔します。」
「あ、どうぞ。小雪、2階行ってて。」
「え……なんで……?」
「いいから。」
「ご友人ですか?」
「うーん、正確に言うと後輩、ですかね。」
紘の言葉に、琉は曖昧に答えた。
「そうでしたか。」
「あんま他人に聞かせたい話でもないですよね?」
「そうですね、できれば。」
紘は申し訳なさそうにそう言った。
「な、頼むから。」
「わかった。」
小雪が2階に上がり、琉と紘は向き合って座る。
恋は紅茶を淹れている。
「恋、腕痛くないの?」
「え、あー……まあ少しは痛みますけど、大丈夫です。」
そういう恋の腕にはまだ包帯が巻かれていて、病院に薬をもらいに行ったら、零に怒られた。
せっかく足の骨折が治って、事故の怪我は完治したのに、また新しく傷を作ってきて!と言われ、傷が深いところもあるから包帯を巻いておけと言われたのだった。
恋が紅茶を持って食卓の椅子、琉の隣に座る。
「それで……どうしたんですか?」
「……実はさ。」
恋が尋ねると、紘の口からはとんでもない話が出てきた。
やはり人質になっていたのは千秋だったらしいが、その千秋がかなりまずいことになっている。
精神的に壊れてしまっている、と言っても過言ではない。
「まあそれで、病院近いところで、2人で住めるところで、即入居可だったのがこの隣だったってわけ。青木って表札かかってたけど、まさか恋の家だったなんて。」
「反対側の数軒先に、明希と木之本さんの家もあります。」
「あ、そうなの?!ご近所さんに知り合いいるとか助かる……俺、代表取締役になったから家空けること多くなりそうで……在宅の仕事にしたいところなんだけどそうもいかなくて……」
「紘さんがいない間、千秋さんと一緒にいましょうか?俺も仕事がない時なら、ですけど。」
「え、いいの?」
恋の提案には琉も驚いた。
「はい。まだ怪我治ってないなら食事とか困るだろうし……俺でよければ隣の家に行きます。」
「助かる……本当ありがとう。」
「ご近所さんってことなら、仲良くしましょうね、紘さん!」
「ありがとう。本当にありがとう。えっと、赤津さんって呼ぶのもなんだよなぁ……」
「俺年下ですし、琉でいいですよ。多分翔也も翔也でいいって言うだろうし、明希くんも明希って呼んでいいと思います。」
「本当助かる。まだ千秋は病院にいるんだけど、明日からこっちくるから。」
「わかりました。なんかあったらすぐに言ってください。俺近くのファミレスで定時社員として働くことになったので、急用の時はそっちに来てくれても大丈夫です。」
「うん。ありがとう。明日、千秋を連れてもう一度挨拶に来るね。」
「わかりました。」
紘は玄関でもう一度お礼を言い、出て行った。
「恋。」
「……なんですか。」
恋は気まづいのか琉と目線を合わせようとしない。
「無理、すんなよ。」
何を、なのかは琉にもよくわからなかった。
だが、そう言わなければならない気がして、なぜだか恋が消えてしまいそうな気がして、いることを確かめるように頭を撫でた。
「無理なんて、してないですよ。」
恋の頬は少し赤いような気がして、琉は恋から目が離せなかった。
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