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episode.123 明希を頼みますにしおりをはさみました!
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episode.123 明希を頼みます
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〜明希side〜
それから、3人で他愛もない話をして、明希と明利のわだかまりは、もう影もなくなった。
「菜々子と利希(としき)にも会っていくか?」
「利希?」
翔也が首をかしげる。
「明希の弟です。明希は利希が生まれて間もない頃に出て行きましたから、あまり知らないが……利希という名前は菜々子がつけました。明希の"希"と同じ字を使いたいと、菜々子が言ったんです。」
「菜々子さんが……?」
明希は驚いた。
「菜々子は私と違って、ずっと心配していたよ。私が、明希にひどいことをしていたと気付かされたのも菜々子のおかげだ。」
「菜々子さんには……嫌われてるもんだとばかり思ってました。」
「そんなことはない。今は利希を迎えに行っているが、もうじき帰ってくる。せっかくだから会って行きなさい。」
明利がそう言った時、ちょうど玄関の方から扉の開く音が聞こえた。
何やら話し声が聞こえ、すぐ後に応接間に向かってくる足音がする。
「明希くん……!!」
菜々子の隣には4歳になったばかりの利希の姿もあった。
「えっと……」
明希が立ち上がると菜々子はこちらにやってきて、明希をぎゅっと抱きしめた。
「よかった……とても元気そうで……いろいろあったと聞いていたから、心配していたのよ?体は平気?辛いところは?」
そう言いながら明希の頭を撫でる菜々子は、泣いているのか、少し声が震えていた。
「大丈夫、です。心配かけて、ごめんなさいっ……」
明希の目からも涙が溢れていた。
「いいの、いいのよ……」
「おかあさん、このひと、だあれ?」
菜々子の服の裾を引っ張り、利希がそう尋ねる。
「利希のお兄さんよ。」
「おにいちゃん?」
利希の顔が、パァっと明るくなり、明希の足元にぎゅっと抱きつく。
「おにいちゃん、としきね、おにいちゃんとあいたかったの!おにいちゃんはね、いそがしいからあえないって、いわれてたの!おにいちゃんきてくれたの?」
「うん、これからはもっと会えるからね。」
明希はそう言って利希の頭を撫でる。
「ほんと?おかあさん、おとうさん、ほんと?」
「本当だよ。ほら、利希、お兄さんの恋人にも挨拶しなさい。」
「こいびと?」
「お父さんとお母さんみたいな関係なんだよ。」
そう言う明利は少し楽しそうだった。
「うえはらとしきです。よろしくおねがいします。」
利希はそう言って、翔也にぺこりと頭を下げた。
「うん、よろしくね。木之本翔也だよ。」
「しょうやさんと、おにいちゃんは、おとうさんとおかあさんになるの?」
「はっはっはっ!」
俊希の言葉に明利は笑う。
「ちょ、父さん……子供に変なこと教えるから……!」
「いいじゃないか。私だって孫は見たいぞ。」
「……父さん性格変わったよね。」
「明希くんが帰ってきて嬉しいんですよ、きっと。」
上原家には、久しぶりに花が咲いたような明るい空気が漂っていた。
「ところで、家に来たのは結婚の報告なのだろう?菜々子も帰ってきたことだし、話を聞かせてくれないか?」
「利希、あっちで遊んでて。」
「うん。わかった!」
利希は執事と一緒に部屋を出て行く。
明希は明利の変化に戸惑いを隠せないが、それと同時に嬉しくもあった。
心のどこかで望んでいた。
父親に愛され、こうして笑顔で話せることを。
後妻ではあれ、母親の菜々子と仲良くできることを。
ずっとずっと、望んでいたのだ。
「結婚式は、俺が大学の講義が休みで、金曜日の、6月1日にあげることになった。それで、父さんたちの都合は……」
「無理やりにでも空けるさ。」
「大丈夫ですよ、その日は会社をお休みにすればいいんだから。」
「本当に……?」
「当たり前だ。お前がバージンロードを歩くのだろう?」
「あらあら、そうなのね。」
「……父さん、認めたからって恥ずかしいことばっかり言わないでよ……」
「父親になったからには少し憧れたものだよ。バージンロードを歩くことをな。息子の隣なんて、こんなに誇らしいことはない。」
そう言う明利はとても優しい笑顔をしていた。
「改めて、明希さんを、俺にください。」
「はい。翔也さん。明希を頼みます。」
明利と菜々子はとても嬉しそうな顔をしていた。
「さて、式場はもう決まっているのか?手伝えることがあればなんでも言いなさい。」
「新婚旅行とかは行けるのかしら?明希くんも大学あるし、翔也さんもお仕事忙しいわよね。」
「大学を卒業したら妊娠薬の投与も始めるか?支援はいくらでもしてやるぞ。」
「ちょ、ちょっと2人とも!!落ち着いてよ!!」
明希が顔を真っ赤にして叫ぶと、他の3人は顔を見合わせて笑った。
「もう……」
明希もそんな3人を見て微笑む。
明希の心は、外の空と同じく、晴れやかだった。
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