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〜恋side〜
17時半
ドォォ…と音が鳴り、恋は目を覚ました。
「わー…雷なってきたな。」
雨がポツポツと降り始めていて、外はかなり暗い。
「あ、起きちゃった?」
「はい…」
「体どう?」
「少しだるいです…」
「17時すぎに、赤津さんから今から帰るって連絡あったからね。30分くらいで着くって言ってたから、もう少しで帰ってくるよ。」
遥はそう言って恋の頭を撫でた。
外では雷が鳴っていて、恋の体は強張る。
「怖い…?」
よほど酷い顔をしていたのか、遥が心配そうに恋を見ている。
恋は心配をかけまいと首を横に振ったが、体はカタカタと震えだした。
「無理しなくていいよ。もう少しだけ待っててね。赤津さん帰ってくるからね。」
雷の音はだんだん大きくなってきた。
熱があるせいなのか、いつもより余計に怖い気がした。
「大丈夫だよ。」
ウサギのぬいぐるみを抱きしめたくなって、でもそれが手近になくて、恋はかけられていた布団をぎゅっと握った。
遥がその手をさすってくれているが、やはりそれは琉の手とは違って、遥には申し訳なく思うが、早く琉に抱きしめてほしかった。
ドゴォォォォ!とひときわ大きな音がなり、体がビクッ!と震えた。
やはり大きな雷の音を聞くと、どうしても事故のことがフラッシュバックする。
それに伴って恐怖感や不安感も増し、目に涙が滲んだ。
「ただいま。」
その時、玄関から琉の声が聞こえた。
「恋くん!」
遥の制止の声も無視して、恋はフラフラする体を叱咤して玄関に向かった。
「こら、寝てなきゃダメだろ。」
「おかえりなさい…」
帰ってきた琉は少し濡れていて、雨に濡れたらしい。
自分の服が濡れるのも厭わず、恋は琉にぎゅうっと抱きついた。
「ただいま。服濡れるだろ。」
口ではそう言いながらも、琉は恋の頭を撫でてくれている。
「おかえりなさい。」
「遥さん、ありがとうございました。」
「いえいえ!雨大丈夫でした?」
「少し濡れたくらいですよ。」
「そうでしたか。一応お湯張りしておきましたから、赤津さんも風邪ひかないように。」
「はい。あ、そういえば鈴木先生が、迎えに来るって言ってましたよ。」
「え!」
「5分くらいで着くってさっき連絡来てましたから、もう着くかも…」
恋は琉の腕の中で2人の話を聞いていた。
ちょうどその時、インターフォンが鳴り、琉がドアを開ける。
「…おや…」
恋は琉に抱きついたまま、ぺこりと零に頭を下げた。
「遥、帰るよ。」
「うん、荷物とってくるね。」
遥がリビングに向かい、3人が残された。
「…また酷い顔色ですね。」
「ですね。」
零と琉は恋の顔を見てそう言う。
自分はそんなに酷い顔をしているのか、と恋は思った。
「恋ー、俺靴脱ぎたいから一回離れて。な?」
琉にそう言われ、恋は一度離れたが、その目は不安に揺れていた。
「…随分普段と違いますね。こういう時くらいでないと甘えられないのだと思いますけど。」
「あはは…そうですね。もうとことん甘やかしてやりたくなりますよ。」
琉は靴を脱ぐとポンポン、と恋の頭を撫でた。
「お待たせー!」
「では俺たちはこれで。」
「はい。ありがとうございました。」
零と遥が家から出て行くと、恋は再び琉に抱きついた。
「こらこら、服が濡れるってば。」
「やっ…」
腕を離そうとする琉に抵抗するように必死にしがみつく。
「まったく…また熱上がるだろ?濡れちゃってるじゃないか。」
琉は恋の部屋着を見てそう言う。
「仕方ないな…恋、風呂入るぞ。恋は熱上がったら困るからシャワーだけな。」
琉はそう言うとひょい、と恋を抱き上げてそのまま浴室に向かう。
脱衣所でポイポイ服を脱ぎ捨てて、恋の部屋着も脱がせる。
「あ…着替え持ってきてねえじゃん…ちょっとだけ待ってろ。」
琉は恋を浴室に押し込み、バタバタと2階に上がっていく。またすぐにバタバタと音がして琉が戻ってきた。
「よし、お待たせ。」
そのあとの琉の動きは早業だった。
ささっと自分のシャワーを済ませ、恋の体が冷えないうちに体を洗い浴室を出ると服を着せる。
「ありがとうございます…」
「ん、髪乾かすぞ。」
そう言われてまた抱き上げられて2階に行き、髪の毛を乾かしてくれた。
「…ごめんなさい…」
「ん?」
一息ついたところで、恋は俯いた。
「迷惑…かけてごめんなさい…」
今思えば、帰ってきていきなり抱きつき、シャワーまで浴びさせてもらい、何から何まで琉がやってくれた。
それがものすごく申し訳ない気がした。
だが琉は優しく恋の頭を撫でてきて、恋は顔をあげる。
「甘えていいって言ったろ?まあ買い物は翔也に頼んじゃったから、夜ご飯は少し遅くなるかもだけど、それでもいいか?」
恋はコクコクと頷いて、琉にまた抱きついた。
我ながら弱りすぎだと思うくらい、琉に抱きしめてほしかった。
「よしよし。あ、熱はどう?」
「さっき37.8でした…」
「結構高いじゃん!!よし、翔也が来るまで寝よう!」
琉はそう言うと恋を抱いたままベッドに潜り込み、トントンと背中を叩き始めた。
琉がいると思っただけで、外の雷の音は気にならなくなった。
安心した気持ちに比例するように眠気も襲ってきて、恋は琉の胸元に頭を預けてそっと目を閉じた。
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