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〜恋side〜
「ただいま。」
「お、かえりなさい…」
玄関から声が聞こえて、恋はリビングから顔を出した。
「ただいま。ちゃんとご飯食べた?」
「…食欲なくて…食べてない…です。」
結局昼も食べる気になれず、今日はまだ何も口にしていなかった。
「何なら食べれそう?作るよ。」
「…い…いらないです…」
「…体壊すよ?」
「…食べたく…ないので…」
「…そっか。」
「琉さんの…夜ご飯…作ってあるので…食べてください…」
「ありがと。具合悪そうだし上行って寝てな?」
優しくそう言われて頷く。
だが、恋の心の中は不安でいっぱいだった。
寝ていろ、と言われたことは、体の心配をされているのだとわかっている。
でも、琉とは別の部屋に行かされることが、今は一緒にいたくない、と言われているような気がして、辛かった。
本当は、今すぐにでも抱きしめてほしい。
自分が怯えても、大丈夫だ、と言って欲しい。
目の前にいるのは、他の誰でもない、赤津琉なのだと、わからせてほしい。
でも、そんなことは言えないし、昨晩のことがある以上、抱きつく勇気もなかった。
「…おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
いつも通り優しい琉が、かえって遠く感じられて、それも嫌だった。
すべての不安を振り切るように、早足で2階に上がり、ウサギを抱きしめて布団に潜り込む。
まったく睡魔はやってこなくて、ぎゅっと目を瞑るが、眠れなかった。
その晩、琉は、ベットに入ってこなかった。
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〜琉side〜
「ただいま。」
「お、かえりなさい…」
リビングから顔を出した恋の顔色はものすごく悪かった。
「ただいま。ちゃんとご飯食べた?」
「…食欲なくて…食べてない…です。」
目が真っ赤に腫れていて、ずっと泣いていたのだとわかり、琉の胸は痛んだ。
「何なら食べれそう?作るよ。」
「…い…いらないです…」
「…体壊すよ?」
「…食べたく…ないので…」
「…そっか。」
それ以上は何も言えなくて、無理に食べさせるのもよくない、と思い至る。
「琉さんの…夜ご飯…作ってあるので…食べてください…」
「ありがと。具合悪そうだし上行って寝てな?」
寝不足もあるのか、青い顔をしていて、とてもじゃないが食べるのを待ってもらったりする状態には見えなかった。
極力優しく言えば、素直に頷いたが、表情は不安そうだった。
まだ、自分が怖いのだろうか。
「…おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
いつも通りの自分を心がけて、恋に返す。
本当なら頭でも撫でてやりたいが、恋が怯えて震えているのを見るのは可哀想で嫌だった。
結局何もできず、2階に上がっていく恋を目で追う。
パタン、と扉が閉まる音がして、寝室に入ったことを確認すると、琉もリビングに入る。
テーブルに置いてあったのは、琉の好きなグラタンで、さらに胸がズキズキと痛んだ。
どうしたら恋の気持ちが軽くなるのか、どうしたら恋の傷が早く癒えるのか。
考えても答えの出ない問いに、琉はため息をついた。
その晩、そっと恋の様子を見ると、布団に潜り込んでいて、寝ていたら起こしても悪いと思い、また隣の部屋に寝た。
一人のベットは、思いの外寒く、心まで冷え切ってしまう気がした。
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