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〜恋side〜
10時
「はーい!」
インターフォンを鳴らし、聞こえてきた明るい声。
恋は昨晩家を出て行って、ホテルに宿泊し、今はとある家の前にいる。
その家とは
「あら?恋くん?」
「お久しぶりです、お義母さん。」
琉の実家であった。
「朝からどうしたの?1人?…その荷物、どうしたの?」
「はい…あの実は…」
受け入れてもらえるか心配でたまらない。
でも、ここ以外に頼るところが見つからなかった。
琉と喧嘩してしまい、家を出てきたことを伝える。
眞弓はとにかく中に入って、と家の中に入れてくれて、温かいココアを出してくれた。
「美味しい…」
「もう、琉のことだから何かしたんでしょう?本当あの子はどこか鈍いから…」
ココアを飲んで、少し落ち着いた恋に、眞弓はそう言った。
「あの…本当にすみません…喧嘩した相手の実家に来るとか…意味わかんないですよね…」
「いいのよ。頼っていいって言ったでしょ?」
眞弓は柔らかく微笑んで、恋の頭を優しく撫でてくれる。
こういうところは本当に琉とそっくりだ。
「でも…すいません…」
なにに対して謝っているのか、恋にもよくわからない。
ただ、琉と喧嘩したのに、琉の実家に頼り、琉が謝るまで戻る気がない自分を、面倒を見てもらうのが申し訳なかった。
「気にしない気にしない!たまには琉に痛い目見させたらいいのよ!」
眞弓は恋にそう言ってくれる。
琉の家族は温かい、と恋は思う。
それは初めて会った時からそうで、今も変わらない。
「朝ご飯は食べたの?」
「はい。ホテルで…」
「あら、いつから家出てるの?」
「昨晩です。遅かったのでここに来るのは…」
「そしたら…すぐにここを頼ってくれたのね!嬉しいわ。恋くんはもううちの家族なんだし。」
前にここに来た時、親になりたい、と言われた言葉は本気だったらしい。
「恋くんには実家がないでしょう?普通の子ならある逃げ道がないのよね。だからうちを逃げ道にしていいのよ?琉なんかほっときなさい!」
自分が勝手に悩んで、怒って、出てきただけなのに、こうして受け入れてくれる。
まるで本当に実家のようだと思った。
「なんだかお嫁さんと話してるみたいだわ。あ、もちろん私はそのお嫁さんの味方よ。」
眞弓はニコリと笑ってそう言った。
「お義母さん…」
もう何年も、おかあさん、おとうさん、という言葉を使ってこなかった恋は、そう呼べる存在がいるだけで、心が温かくなった。
「部屋は琉の部屋使っていいからね。あ、嫌だったら別の部屋でもいいわよ?奏でも煌でも、琉の部屋に寝かせるから。」
「いえ…琉さんの部屋お借りします。」
喧嘩している、とはいえ、別に琉が嫌いなわけではない。
そもそも嫌いならこの家を頼らない。
ただ、今回は許せない、というだけの話だ。
「ゆっくりして行ってちょうだい。せっかく来たんだし、欲しいものとか食べたいものがあったらなんでも言ってね!」
「ありがとうございます。」
眞弓の言葉に、この家を頼ってよかった、とそう思う恋だった。
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