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〜恋side〜
12時
「え…?」
恋は眞弓に頼まれ、買い物に来ていたとき、今一番見たくないものを見た。
道路の反対側、ちょうど横断歩道を渡ったところに、琉がいる。
だが、1人ではなく、その隣には幾度も見たあの女の姿。
恋は固まったまま動けない。
しばらくして、ふつふつと怒りが込み上がってきた。
こんな状況になっても、こうして女と会っている。
自分に散々連絡をよこすくせに、今は女と会っている。
「ふざけんなよ…」
ポツリと溢れた声は、怒りに満ちていた。
「絶対許さない。琉さんが謝ってくるまで絶対許さない。俺から話に行っても良いかなとか思ったけど絶対行かない!」
くるりと向きを変え、歩きながらそう呟く。
道行く人が振り返るくらいの声の大きさだが、恋は全く気にしない。
「1人で困ってろ!」
ドスドスと勢いよく歩き、琉の実家に帰る。
「帰りました!お義母さん!」
「はいはい!どうしたの?」
「申し訳ありませんがもう少し、いえ、かなりお世話になるかもしれません!!お手伝いはなんでもしますので!」
直角かと思うくらい腰を曲げ、眞弓にそう言う。
「あら…構わないけど、何かあったの?」
「今回は琉さんから謝ってくるまで絶対に許しません!」
恋の言葉に、眞弓は目をパチクリとさせて固まっている。
が、次の瞬間にはクスクスと笑いだした。
「琉も必死になってると良いんだけどね…」
笑いながらそっとつぶやいた眞弓の一言は、恋には聞こえていなかったが、眞弓は楽しくて仕方がない。
「本当にあの人は…鈍感というか無自覚というか…いい加減自分の魅力に気づくべきなんです!」
恋はプンプンと怒りながら買い物袋の中から買ったものを出し、整理していく。
「琉さんにはその気がなくても相手にはその気があるのに!優しいところも良いと思いますが、たまにはきちんと断らないと…」
「っふふ、あははは!」
突然声を上げて笑い出した眞弓に、恋はハッとする。
「あ、すみませんっ!お義母さんの前で悪口なんて…」
「あら、それのどこが悪口なの?惚気じゃないの。」
眞弓はまだクスクスと笑っている。
「怒るってことは、それだけ琉が好きってことでしょう?」
「そ、そんなこと…」
ない、とは言えない。
恋の頬は真っ赤に染まり、眞弓の言葉を肯定しているも同然だ。
「素直になれば、良いことあるわよ。」
「…好きです。」
真っ赤になってそう言う恋は、眞弓からすればものすごく可愛い。
自分の息子をここまで好きでいてくれるなんて、幸せだとそう思っている。
「ま、好きだからこそ許せないわよね!女の人と一緒にいるなんて。琉にはよぉく反省してもらいましょう!」
そう言って笑う眞弓は、悪戯を思いついた子供のようだった。
「はい!」
答える恋も、どこか楽しそうだったのは、琉が嫌いではないからだろう。
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