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〜恋side〜
1月11日 金曜日 13時半
「うっ…うぅ…うー…」
どうして、こんなことになったのか、よくわからない。
今日は、婚姻届を出しに行ったはずだった。
それなのにどうして、自分は泣きながら1人で歩いているのだろう。
振り返ってみても、風に飛ばされた枯葉が舞うだけ。
道行く人は、皆、先を急いでいる。
恋が求める愛しい人の姿は、見当たらない。
どこかで、期待していた。
追いかけて来てくれると、信じていた。
でも
琉は追ってこない。
「うっ、う…ふぅ、ぅ…」
漏れる嗚咽を止めることも、涙を拭うことすらできない。
スマホを開いて、明希か千秋に連絡しようとして、やめた。
だがそのスマホに、着信がある。
パッと画面を開いて、知らない番号で、少し落胆した。
「もし、もし…」
『もしもし?小雪だけど…恋さん…?』
出てみて、知っている人の声で、安心して、また涙が溢れる。
「こ、ゆきさっ…おれ、うわぁぁぁぁ!」
道行く人は泣いている自分を不審に思っているだろう。
『れ、恋さん?!なに?!どうしたの?!泣いてるの?1人?琉さんは?なんかあった?!』
冷静な状態でも答えられないであろう矢継ぎ早な質問。
何も返すことができず、ぐすぐすと泣き続ける。
『えーと、ごめん…1人?』
「は、いっ…」
『どこ?』
「く、やくしょ…の、ちかく、の…は、んか、がい…」
途切れ途切れになんとか答える。
『僕今、日本に帰って来てて、ホテルにいるんだけど…迎えに行く?1人で来れる?』
「い、けます…」
『えっと、〇〇ホテルの、3005号室。元々ツインの部屋だから、一緒に泊まるって、フロントマンに伝えて。お金はチェックアウトの時に払うことにしてるから、気にしなくて大丈夫だよ。』
「ごめ、なさい…」
『とりあえずおいで?待ってるから。』
「はい…」
電話を切って、トボトボと歩き出す。
顔に当たる風が冷たい。
ニュースで、雪になるかもしれないと言っていたことを今更思い出す。
そういえば、琉が折りたたみ傘を持って行っていたことも思い出し、また涙が溢れる。
そんな恋を嘲笑うかのように、空から降ってくるのは、冷たい、白い結晶。
"「愛してる。俺と一緒になってほしい。」"
雪と一緒に思い出されるのは、あの日の琉の言葉。
2度と離さないと、そう言ったはずなのに。
自分も、そのつもりだったはずなのに。
簡単に、赤い糸は解けてゆく。
体が、どんどん冷えていく。
隣に、冷えた手を温めてくれる大きな手を差し出してくれる人はいない。
冷えた体から、心にまで、冷気が侵入してくるようだった。
心が、冷たくなっていく。
1人にしないと、そう言ってくれたあの人は
恋だけを愛すると、そう言ったあの人は
今、隣にいない。
あぁ、久しぶりに、寒い。
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