アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
夜の街に小説を想うということにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
夜の街に小説を想うということ
-
「....カミエちゃん、あのね」
前を向いたまま會下が話しかけてきて、
上江は思わず目を逸らした。
「...怒らせて悪いって思ってるけど
...やっぱちゃんと電話かけてきてよ。声、聞きたいもん」
突然言われた言葉の意味が理解できず、
声が聞きたいというフレーズだけがこだました。
「は....ぁ...?」
一体何を言っているというのか、
考えようとして思考が追い付かない。
そうこうしていると會下は振り返って苦笑した。
「.....ごめんね」
何故か謝られて、上江は頭に血が昇るのを感じた。
その謝罪が自分の烏滸がましい予想が当たってしまったことに結びつく。
なんだよ。ふざけんなよ。ごめんねじゃねえよ。
考えるより先に相手の襟首を掴んでしまった。
「.....殴る?」
會下がバツの悪そうな顔をしてやがて目を閉じた。
確信犯的に並べられた文字が腑に落ちて、上江は無気力な気配に押し流されて結局何もすることなく彼から手を離した。
「...いいですよ、編集ですから。
いい、資料に、なりましたかね」
泣くのも笑うのもバカらしくて、
上江はぼんやりと彼の瞳を見つめた。
茶色っぽい瞳に、世界はどう映っているのか。
こんなくだらない爛れた恋愛が、美しい官能小説に、
芸術になるのだから。
「あなたの眼には、
誰でも綺麗に映ってるんでしょうね......
私はこんなに...」
惨めで汚いのに。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 46