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君が消えた、夏 プロローグにしおりをはさみました!
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君が消えた、夏 プロローグ
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二人の小さな子供が、大きな家の裏庭の片隅に、一緒に座っていた。
他の大多数の子どもたちは、表の方で、喚声をあげて遊んでいる。大きな子どもたちになると、部屋で宿題など、部屋の中にいる子どももいた。
二人は、走り回ったりすることなく、そこで一緒に座っている。
「うわぁ、すごいすごい、きれいだね」
二人の内でも、小さい方と思える子どもが喚声をあげた。
何をしているようにも見えないが、子どもたちは子どもたちで楽しんでいるようだ。
笑みを浮かべてはしゃぐ子どもに、少し年長と思われる子どもは、得意げに笑って見せている。
「これでさ、おまえがこわい、っていうやつ、やっつけるんだ」
腕を大きく振ってみせる子ども。
光の筋が、その後を追いかけた。
「すごーい、いつもそうやって、たすけてくれてたんだね」
何をしているようにも見えなかったが、年長の子どもは小さい方の子どもに、自分の力を教えていたようだ。
「ぼく、あーゆうのからにげれなくて、いつもこわかったのに」
この施設にやってきてから、逃げずとも、年長の子どもが助けてくれていた。
あの恐いのを消して、自分に近付けないようにしてくれていた。
消す術は知らなくて、どうやって?どうやってるの?と尋ねたら、光が彼の手を覆った。
とても綺麗なその光は、年少の子どもには力強く頼もしい物に見えた。
でも、その光が見えるのは、ここにいる二人だけだ。年少の子どもが恐がるモノも、見える人は誰もいなかったのだ。
「ふたりだけの、ひみつだぞ。みんなみえないんだ。だから、ひみつ」
ずっと、皆には見えないモノに怯えていた少年。
見えないモノを認知して、それを消す術を持った少年。
二人はその力から、親にさえ気味が悪いと言われて、この施設に預けられたのだ。
だから、秘密と。誰にも知られてはいけないのだと、幼いながらに子どもたちはわかっていた。
「うん。ひみつだね。こんなきれいなひかり、みんなみえないなんて、かわいそう」
なんて、年少の子どもは笑っている。
親に捨てられてここに来たのに、この力を見ることのできる少年に出逢って、年長の子どもは救われた。
彼を助けるために、俺はここに来たんだ、と思うほどに。
「おれが、ずーっとまもってやる。だから、ずっといっしょにいような」
少年たちは、秘密の約束をして、ずっと一緒だと笑いあう。
「うん。ずっと、いっしょにいようね」
目が覚めた。
あんな幼い頃のことを夢に見るのは久しぶりだ。
あれから成長して、自分たちの力がどんなものかわかって。見るだけで怯えていた自分も、それを払う力を得た。
でも、秋人はあの時約束したことを、ずっと守ってくれている。
ずっと、自分の近くにいてくれて、自分を守ってくれている。
なんでこんなに胸がザワつくんだろう。
幼い頃の夢は、決して嫌なものではなかったのに。何故こんなにも、焦燥感が心を支配してくるのか。
わからずに章は、とにかく顔を洗って目を覚まそう、と考える。
起きて準備をして、秋人に会えばきっとこのザワつきもなくなるはずだ。
章は、ゆっくりとベッドから降りて、洗面所に向かった。
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