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chapter Ⅲにしおりをはさみました!
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chapter Ⅲ
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side 愛翔
「珍しいねー、二人ともお休みなんて」
「あぁ」
「つまんないのー」
柚の何気ない一言に同意する。
巡回、見回り。体の良い建前を並べた所で
結局はサボりなわけだが。
お気にいりの二人が揃って休んだことで
暇をもて余した柚に授業を受ける気なんて
更々なく。今までのようにブラブラと校内を歩き回る。
柚は元々、あの二人が来るまではロクに
授業も受けずサボってばかりだった。
俺もそれ自体に不満はなく、聞き役として
一緒にサボっていた。
風紀と生徒会は授業免除。
学生にあるまじきその報酬は限られた者
のみが手に出来るものだからで。
そんな柚が変わったのは明らかに二人に
会ってからだった。
編入生が来ると聞き好奇心故に久々の
授業に出ることにした。
そこで何故か柚は二人を気に入った。
「まなと」
不意に呼ばれた自分の名前に足を止めた。
振り返れば俯いた幼馴染みの姿が。
その心中を察して手を伸ばした。
「僕は、友達になりたいのに」
初めは何がそんなに柚を惹き付けたのかは
分からなかった。
「二人とも、きっちり境界線を引いてる。
その上、分厚い壁で遮ってさ」
けど、しばらく過ごしている内に何となく
分かってきた。
あの二人に、不思議と惹き付けられる。
顔じゃない。特別凄い性格でもない。
「ふとした瞬間に見せる二人の顔はまるで
別人みたいで。時々怖くなる」
同い年とは思えない表情(カオ)をする。
どんな時でも揺るがない笑顔と、無表情。
「冬季くんなんて、笑顔で拒絶しくてるし。
悠季くんの方がまだマシだよ」
柚はこう見えても政治家の息子だ。
汚い大人をずっと見てきた。
笑顔の種類なんて一瞬で見分けられる。
笑顔の、意味も。
政治家の息子。それだけで寄ってくる虫は
ごまんといる。
結果、柚は極端な性格になった。
興味が湧くかないか。それが判断基準。
「だけどやっぱり、友達になりたい」
だから、こいつが自分から友達になりたい
なんて言うのは珍しい。
だから、
「お前がしたいと思うことをすればいい」
「ま、なと」
「なりたいんだろ?友達に」
「でも....」
「柚は興味のあるものを簡単に手放すような
性格じゃないだろ」
癖のない髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。
驚いた顔の、真ん丸な瞳とかち合った。
ふっと口角を上げてみせる。
「そう、だね...うん」
瞬きの後に現れたのはいつもの瞳で。
「ありがとっ、愛翔!」
「あぁ」
満面の笑みに頷きを返せば小柄な体が
抱きついてきたので難なく受け止める。
悪いな、八城兄弟。
こいつはこうと決めたら絶対に実行する。
またしばらくは煩くなるだろう。
この場に居ない二人に、胸中で合掌した。
side 愛翔 END
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