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浅黄が綾倉家に来た日 4にしおりをはさみました!
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浅黄が綾倉家に来た日 4
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「で、この人が突然、離婚して、彼女を家から追い出したのは、あなたが原因?」
浅黄は返事に窮した。
おそらく、自分にしたことが原因だろうから、答えは『イエス』だ。
だが、単に肯定しただけだと、誤解される可能性が高いように思えた。
かといって、本当のことは話したくなかった。
浅黄が逡巡しているうちに、綾倉が口を開いた。
「私が決めたことなので、その質問は彼には答えられません。
彼が原因ではなく、彼女のしたことが原因です」
「いきなり家を追い出されるなんて、一体、あの人はあなたに何をしたの?」
綾倉の母が浅黄を見た。
浅黄の頭の中で、ホテルの部屋に入り、ニヤニヤ笑う安達の姿を見たときの光景がよみがえってきた。
あの時そうだったように、動悸がして、口の中が乾いてきた。
何か言わないとおかしく思われると、何とか声を発しようと口を開きかけたとき、綾倉が浅黄の手を握った。
「それは言わない方がいいでしょう」
綾倉は母に向かってそう言うと口をつぐんだ。
それ以上聞くなと言う綾倉の意思表示だった。
「そうね、そういうこともあるわね」
綾倉の母は息子の思いを受け止めた。
浅黄は綾倉を感謝の気持ちを込めて見つめた。
綾倉は浅黄を見返して、『大丈夫だ』というようにうなずき、手を離した。
綾倉の母は話題を変え、最近老人ホームに入った自分のいとこの近況について息子に語った。
80歳を過ぎていて、転んで骨折して入院したところ、心不全と静脈瘤が見つかった。
骨折の手術の前に、そっちの手術をしないといけないが、体力的に厳しいらしい。
綾倉はその人には1度会ったことがあるかどうかという程度で、顔も思い浮かばない。
正直、どうでもいい話だった。
それでも、母は浅黄を少し落ち着かせる時間を作っているのだということは理解していたので、多少、関心があるかのように話に付き合った。
「あなた、紺野をどうするつもり?」
ひとしきり、いとこの話が終わると、今度は運転手の話になった。
「彼、自分の仕事がなくなるんじゃないかって心配してるそうよ。
恋人の牛乳のことなんかより、自分の使用人のことを考えてあげなさい」
「牛乳?」
浅黄は思わず口をはさんでいた。
「この人ったら、仕事中に家に電話してきて、あなたが毎朝牛乳を飲むから用意しておくようにって」
「仕事中じゃありません。
昼休み中でした」
「同じことよ。
あら、我慢しないでおかしい時は笑ってもいいのよ」
綾倉の母が浅黄の顔を見て言った。
「牛乳なんて、1日ぐらい飲まなくても大丈夫だよ」
綾倉がそんな電話をしようと思ったことからしておかしかった。
「笑いすぎだ」
綾倉は憮然として浅黄を注意した。
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