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紅葉の季節 12にしおりをはさみました!
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紅葉の季節 12
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桜井と別れた後、野口は会社を辞めた。
野口の元上司が立ち上げた会社に移ったと、別の先輩から聞いた。
二人の仲を知る者はいなかったが、やはり、同じ会社にいるのは気まずかった。
これで、野口とはきっぱり縁が切れた。
だから、浅黄に一人の男として向き合えるという考えが、桜井の頭に浮かんだ。
そう思うと、居ても立っていられなくなった。
10時を過ぎたころ、オフィスを抜け出し、外で浅黄に電話した。
呼び出し音が5回ほどなったとき、浅黄が電話に出た。
「はい」
寝起きで、不機嫌な声だった。
「ごめん、寝てたよね?」
「誰だよ」
「桜井。野口さんの・・・」
怒らせてしまったかもしれないと、恐る恐る答えた。
「ああ。何?」
少し、声の響きが和らいだように聞こえた。
「今度の金曜に店に行ってもいいかな?」
「いいよ」
「ありがとう。じゃあ、仕事中だから」
そう言って、電話を切ると、オフィスに戻った。
翌日も、浅黄の声が聞きたくて、今度は昼休みに電話した。
浅黄はすでに起きていて、前回のような不機嫌な声ではなかった。
少し世間話をして電話を切った。
そして、翌日も、そのまた翌日も電話した。
その時は、桜井は話を途中でさえぎられて、「悪いけど、今、時間がないから」と電話を切られた。
そこでやっと、自分がしていることに気が付いた。
これじゃあ、ストーカーだよな。
きっと、電話されることを迷惑に感じているだろう。
たぶん、浅黄は友達の元彼氏と付き合うことはない。
自分はほとんどいつも、浅黄のことを考えているが、彼は普段、桜井のことを頭の隅にも浮かべていないだろう。
これを機会に、きっぱりあきらめよう。
そう決めると、さっきまであんなにのぼせていた浅黄への想いがスーッと冷めてしまった。
店に行くと言っていた金曜日も行かなかった。
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