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18歳以上ですか?
23にしおりをはさみました!
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23
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(Side:雅)
轟さんは、頑なに俺を抱こうとはしなかった。
「俺のこと好きなんでしょ?抱かせてあげるよ」
「え、遠慮致します......っわ、私のことは、どうかお気になさらず」
「俺のこと嫌いになった?」
「ままま、まさか!ずっとずっとお慕い申しております!」
「じゃあ抱いてよ。轟さんは特別ね、俺のこと好きにしていいよ」
「わ、私は結構です!どうか、み、雅さんが心から愛する人となさってください!」
愛する人、という言葉で彰吾の顔がちらついたけど、気づかないふりをする。
「俺のことエロい目で見てるくせに。......もう二度と誘ってやらないから」
「み、雅さん......」
「俺の命令聞けないような下僕なんかいらない」
酷いことを言っている自覚はあった。けれども、これ以上轟さんといると昔の自分を思い出してしまいそうな気がして、俺は轟さんを遠ざけた。
また、大切な人を傷つけてしまった。どうして俺は傷つけることしかできないのだろう。でも、これで轟さんにも愛想をつかされるだろうと思った。嫌われること以外、相手を幸せにする方法がわからないのだ。
なのに、轟さんは毎回変わらずあの格好でイベントには一番乗りで入場しては、定位置で俺のショーを食い入るように見ていた。分厚い眼鏡はスポットライトに反射して、その奥の瞳を見ることができない。けれどその目がまだ俺を見てくれている確信があって嬉しくて、でも冷ややかな視線を返すことしかできなかった。
「あのオッサン、また来てんね」
「俺らがあいつ来れないようにしてやろっか?」
あまり育ちの良さそうではない若い男のグループが、最近イベントによく出入りしていた。初めは女目当てだったようだが、俺を見てからは全員がよってたかって俺に群がってきた。
「なにもしなくていい」
「でも、ミヤビちゃんも鬱陶しそうにしてんじゃん?」
『みやびちゃん』という響きが嫌だった。これまで彰吾以外にも呼ばれていたが、親しくもない、仕事仲間でもない輩にそう呼ばれたくはなかった。
「その呼び方やめろって言ってるでしょ」
「なーんで、可愛いじゃん?ミヤビ様の方がいい?」
「女王様だもんなー」
「ミヤビサマー、この後も俺らと遊ぼうよ」
「4P?5?もっと呼んでもいいぜぇ」
「それじゃもはや乱交じゃんー」
ゲラゲラと下卑た笑いが癪に障る。なんだって俺は、こんなやつらの相手をしているのだろう。
「き、君達、そんな態度は雅さんに失礼だと思わないのか」
その時、俺と男たちの間に黒い影が立ち塞がった。
「うわ、なんだよオッサン」
「ミヤビちゃんのストーカーだ。きめぇんだよ。ミヤビちゃんも嫌がってんだぜ?わっかんねぇの?」
「大体なんだよ、今時その七三!だっせぇ」
轟さんだった。ブルブル震えてるくせに、俺を背中に隠そうとしている。そんなこと、してくれなくていいのに。
「退いて。俺が誰と何しようと俺の勝手でしょ。呼んでもないのに入って来ないで」
「み、雅さん......」
「抱いてもくれない男に用はないの。......もう、会いに来ないで」
今すぐその胸に抱きつきたかった。抱いてくれないなら、側にいてくれるだけでも良かった。けど、俺は轟さんを、龍弥や彰吾の代わりにしようとしているだけなのだ。
轟さんを突き飛ばして、涙が零れてしまう前に背を向けた。
「み、雅......!」
「フラれてやんのー!」
「ミヤビちゃんは、オッサンより若いバッキバキのチンコのが好きなんだよ」
「ギャハハ、マジそれな!」
目の前が真っ暗だった。出口のないトンネルをひたすら歩いているようだ。いや、立ち止まっているのかもしれない。出口なんてないのだと、俺はもう諦めてしまっていた。
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