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25にしおりをはさみました!
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「 それじゃ、僕はそろそろ行くね。まだ病み上がりだしゆっくり寝て体を休めてね。また来るから知りたい事とかわからない事とかあったらいつでも聞いて!僕は君の味方だからね!」
木賊はそう言うとニコリと笑って「またね。」と部屋から出て行った。
1人部屋にのこされた俺はフーっと肺に溜まった空気を吐き出し勢いよく寝具に倒れこむ。
ふわふわしたそれは勢いよく倒れたにもかかわらず、どこも痛みを受けなかった。
こんな上等なもの、生まれて初めてだなんてボンヤリ思いながら、俺は少し前まで過ごしていたの家の事を思い出す。
ボロい家に、ガタガタの家具や使い古した食器類にペラペラの寝具。
とてもこことは比べようも無い俺の家。
でも、俺はこんな上等な寝具にねれなくていいからあの家に、あの場所に帰りたかった。
大好きで大切なばあちゃんがいる家、、、母さんとの思い出が沢山残ったあの家に。
嫌なことも沢山あったけど、あそこはたしかに俺の居場所だった。
こんな真っ白な布の枕なんて知らない。軽いがあたたかく肌触りの良い毛布なんて知らない。
こんな透き通ったガラスのコップなんて知らない。
柔らかなクリーム色の壁なんて知らない。
何もかも違いすぎて、ここは俺の場所じゃないと改めて感じる。かなり遠くに来てしまったのだと。
あの場所に、、ばあちゃんに、、二度と会えないのだと、そう思い知らされたようだった。
死んだら終わりだったのに、生きてこんなとこまで来てしまって帰ったら帰ったで村民が騒ぐだろうし、そうすればばあちゃんに迷惑がかかってしまうから帰るに帰れない。そもそもあいつのせいで別の陸地にすら帰してもらえない、、、。
死んでしまえば感じなかったはずの思いがジワジワと心を蝕んでいく。
鼻の奥がツンと痛くなるのを感じて俺は慌ててギュッと瞼を閉じ片腕で両目をおおう。
「クッソ、、、。」
悪態をつきながらかすかに震える唇から息を吐き出す。
思ったよりも精神にダメージを食らっていたようだ。
( こんなに弱気になるなんて、、、これも全部アイツにあんな事されたせいだ、、、、。)
フツフツと湧き上がる怒りをぶつけるように、俺はもう片方の腕を寝具に叩きつけた。
それを、2、3回くりかえしているうちに段々と目眩がしはじめ、俺は自分の体も弱っていた事を思い出す。
「 クソっ、、、やっぱりなにもかもアイツのせいだ、、、。」
俺は朦朧としだした意識の中、脳裏に浮かぶ燃えるような赤い髪の男に「次会ったら、、、あの面殴る、、、、。」と、そう小さく呟き意識を手放した。
俺は夢を見たーーー。
大好きなあの家で、沢山のご馳走を笑顔で食べる夢。
ばあちゃんはもちろんのこと、母さんもいて、母さんはやせ細る前の綺麗で元気だった頃の姿で俺に笑いかける。
俺は嬉しくて嬉しくて、いつもより沢山食べたら、母さんがもっと沢山食べて大きくなってねって頭を撫でるのだ。その、母さんにしては少し体温の低い手優しく頭を撫でるのが気持ちよくて、、でもちょっと恥ずかしかったりして。
そんな俺達を見てばあちゃんも微笑んでて、、凄く幸せな夢だった?
夢だってわかっていても、覚めなければいいと俺は本気で思い願ったーーー。
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