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ひょろりと伸びた腕にしおりをはさみました!
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ひょろりと伸びた腕
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翌朝眠たげに教室の戸を開ければもう半分くらいの人が登校していたようで雑談をしていた。
「おっす。遅いな夜更かしか」
「いや、ちげー。むしろ早く寝た」
綿貫に声を掛けられスクールバッグを机にどさりと置いて答える。
寝たというか寝落ちした。
昨日は家に帰った後ばあちゃんの飯を食い風呂を上がったあたりから意識がない。
手には落ちそうに携帯を引っ掛けていた。
「今日の体育中だってさ」
「んじゃバレーか」
クラスの男女が集まって今日の授業について話している。
今日は体育あるのか。 あ……
「俺体操着ないや」
「は?」
前の席で携帯を眺めていた綿貫がこちらを眉をひそめて見てきた。
「あーそうか。間に合ってないのか」
瞬時に納得したらしく携帯にまた目線を向けた。
その通りで体操着はまだ家に届いていないのだ。
「今回は見学だな」
そう言った綿貫はこちらにあまり意識が無いように思えた。
………………………………………………………………………
四限の体育は体にくる。
昼前ということもあり腹が持たず休み時間に早弁している奴らもちらほらいた。
体育館に入ればむわっと立ち込める湿気と熱気。
確か一限前は三年生が体育だったな。
「暑いな」
頭の後ろから脳に響くような低い声。
「だな、部活の時はもっと暑いだろ」
「そうだな、あつい」
部活の話を出すと少し表情が緩む。部活好きなんだな、と内心羨ましい気持ちになる。
「おい、お前が滝壺か。今回は見学だな。あっちでみてろ」
声の方を振り向けば強面の体育の先生が体育館の端を親指でさした。 端で見てろってことか。
既に2クラス分の生徒がぞろぞろと館内に集まり始めていた。熱気がまた増した気がする。
「あ、体操だけ参加していいですか。体動かしたくて」
別に体調悪くないのにただ見てるだけってのもどうかと思いせめて準備体操だけでも参加させてもらおうと思い先生に提案してみた。
「ああ、いいぞ。体操だけな。その後は見学だ」
体操だけ参加して体育館の隅で座り込みぼんやりとバレーをするみんなを観察する。
いいなー、楽しそう。 熱気に耐えられずワイシャツをパタパタとさせ空気をはらませる。
綿貫の試合相手がローテーションで変わった。
その中にひょろりと伸びた身長に長袖の体操着という異質を放つ奴がいた。
うわ、見てるだけでアチい奴。
自分の見ている場所からは顔は伺えないがマスクまでしているようだ。 自分の額にぶわっと汗が出てくるのを感じる。
綿貫の速いアタックをふわりと受け止め味方にパス。
なんかすごいひょろひょろしてるけどボールを落とさないな。
……………………………………………………………………………
「なあ、体育の時の長袖の奴ってバレー部?」
昼になってスポーツドリンクをぐびぐびと飲んでいる綿貫に問いかけた。
綿貫は飲みながらこちらを流し目で見た。空いている右手は、ストップと言うように手を突き出している。
ぐしゃり という音とともにペットボトルはゴミ箱に綺麗にシュートした。
「あいつはバレー部じゃねーよ。良い勘と察知能力持ってんのにな」
そう言って今度は昼飯のパンをもそもそと食い始めた。
多分バレー的にいると心強いのだろうな。
「でっかかったなぁ。まぁなんかひょろっとしてたけど」
クックックッと喉で綿貫は笑った。
このクラスにいないからおそらく隣の二組の人なんだろな。
「部活は決まったか?」
パック牛乳を飲んでいると前方から唐突に質問。
「んーや、まだ決めてない」
「お前運動以外しなさそうな顔してるもんな」
そう言ってまたクックックッと綿貫は喉を鳴らした。
不服な顔をして見せたが実際そうだ中学校までは運動以外やりたいこともなくひたすら動いてばかりいた。これといった趣味も無かったし。
「あんま激しいことしなさそうだし筋肉同好会とか入れば」
「はぁぁあ?やだよ! 」
オーバーに声を荒らげて言えば俺の顔が面白かったのかあっはっはと高らかにあっはっはっと笑う綿貫を見て俺もつられて苦笑いをしてしまった。
なんで筋肉同好会なんだよ……。
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