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オレンジのパーカー
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放課後になり今日も部活探し。
一応筋肉同好会という張り紙がある部室に立ち寄って見たのだ。
ただ電気は消えて誰もいなかった。(おそらく廃部になってる) そもそも同好会というだけあって部ではないだろうからありなのかわからない。
今日は三棟まで行ってみることにした。
一棟や二棟よりも断然静かで誰もいなそうな雰囲気がした。
此処は部活とかで使われてないか…流石に。
せっかく三階まで来たけど学校見学だよなと、別の階段を軽く跳ねながら降りた。
なんかもう美術部でいいかな、と思い始めていた。正直幽霊になっても気づかれにくいとか小耳に挟んでしまったのだ。
投げやりになりつつある思考で階段を降りていた時だった
「うぉっ」
間抜けにも脚を踏み外し下まで落ちてしまった。転げ落ちた先の壁の角で華麗に受け身を取りそのまま流石俺! と思い立ち上がると角にいたらしい男女に感嘆の顔を向けられた。
若干照れ臭くなりおずおずと振り向くと昨日坂道で帰りに見た人だった。
オレンジのパーカーを着込み首元まできっちりとしめている。更にマスクをしていてひょろりと伸びた高身長。ん?
「体育のときいた…」
「敦輝くん?」
はぇ?
アホヅラをさげた俺をパーカーを被った人は眠そうな目尻を下げ柔らかく笑い俺を見据えた。
………………………………………………………………
大きくないけれど通る優しい声色で俺の名前をよんだその人は女の子にまたね、と会釈をすると俺に向き直った。
「俺、覚えてない?しゅう」
心臓がドクンと跳ねた。 嫌な汗が背を伝って落ちた気がした。
下を向きパーカの袖をぐいぐいと引っ張り指を隠そうとしている。夕日がパーカーのオレンジを引き立てた。
あの日のことが湧き上がるようにぞわぞわと脳を蝕む。
やめてくれ。
「覚えてる、よく遊んだよな」
微笑を浮かべて答えたが今直ぐにでも此処から立ち去りたい気分だった。
「戻ってきたんだ。敦輝くん運動得意だったよね、中学と前の学校はやっぱり運動部だったの?」
「もちろん。陸上やってた」
俺がきっぱりというとしゅうは、ぱぁーと憧れの物をみつけた少年みたいに一瞬目を見開いて 嬉しそうに口元を緩ませた。
こうして話してることにさえ罪悪感をひしひしと感じてしまっている俺は話を中断する隙を決めかねていた。
「じゃあ高校は運動部入るんだね」
「あ、いや。高校は文化系に入ろうと思ってるんだ」
下を向きもじもじと落ち着かない様子のしゅうは あれ?と頭にはてなを浮かべていた。
「…っと…わり、俺このあと用事あるからもう行くわ」
手を軽く顔の前に上げて「じゃ」といい、玄関へと体の向きを方向転換する。
「……うん。さよなら」
何かを言いたそうに口をモニョモニョさせたしゅうはパーカーをぐいっと引っ張り目元まで被り直した。
それをちらりとみてそそくさとその場を後にした。
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