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44にしおりをはさみました!
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とある放課後。腰の痛みを紛らわすために保健室のベッドでまどろんでいれば、橙の簡素なカーテンを割いて九郎が乗り込んでくる。
「今日は確か風紀の集まりがあっただろう? 仮病か?」
言いながら、瞼にキスを落とし、髪を撫でてくる。
「ちゃんと委員長の許可は貰ってる――さすがに九郎との密会ってことは伏せてるけど」
「いけない子だ」
「嬉しいくせに」
俺は九郎の首に両手を回して強引に引き寄せる。こっちにも、と唇を押しあてた。甘く啄まれれば鼻にかかった声が漏れ、保健室に淫靡な水音が満ちる。どちらともなく湿った唇を離せば、肉厚なそれがてらてらと妖艶に光って俺を誘惑した。
ああ、早く、早くシタい。
九郎のでいっぱいになりたい。
すっかり期待に満ちた俺は、了承の合図に九郎の唇をぺろりと舐める。
そうして下から覗きこむようにして催促すれば、九郎は俺の口を塞ごうと、ゆっくり顔を近づけてくる。
俺は目を閉じてそれを享受しようとした。
唇すれすれ、ぬるい吐息が生々しく掠める。
「お前は――誰だ」
驚いて目を見開いた。
射るような九郎の目が、ほんの近くで俺を睨みつけていた。訝ってはいるが、その実、天秤は欲望のほうへと傾いているような、不安定な目だった。
俺が欲しくてたまらないというような。俺を愛してやまないというような。
そんな目だった。
――やはり中身はさほど重要ではないらしい。穴があればいいってか。
俺は正直な九郎に安心して、口端に愉悦を滲ませた。余裕を見せた俺に瞳を揺らして困惑する九郎は、それでも俺の上から退こうとはしない。
なにかを言おうとして開きかけた唇に、もう一度、丁寧に舌を這わせて。とっておきの秘密を耳元で囁いてやる。
「俺は“俺”だよ」
さあ、始めよう。
愛に飢えた可哀想な俺のために。
愛情代わりの、劣情ごっこを。
(了)
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