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後日、洋食屋にて。 2にしおりをはさみました!
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後日、洋食屋にて。 2
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確かに椎名の言う通りだ。
旭はどちらかと言うとメニューに迷うほうだから、スパッと決める椎名が羨ましい。椎名が決めてしまったので、ペラペラと一通りページをめくり、無難な一番人気メニューと書かれているものにする。
「そうかもしれないですけど……うーん、じゃあ、デミグラスソースの煮込みハンバーグにします」
「ご飯はどうする?」
「えっと、小盛りで」
「ん。わかった」
頼むものが決まると、椎名は店員を呼んで手際よく注文をした。そして、頼み終えると旭のほうへ向き直り、ふんわり微笑む。
大人の色香が漂うというか、旭は椎名の表情を見てうっとりした。女性にモテそうなのに、今は独り占め出来ていて、ちょっとした優越感に浸る。
「旭くんって少食なんだね。どうりでこの間の時に軽いと思ったわけだ。俺、その頃は……というか、新社会人くらいまでは馬鹿みたいに食ってたよ」
「高校生の時は凄かったです。その時は妹に怪物って呼ばれてました」
「怪物!? 旭くんが怪物!? あはは、そうなんだ……怪物って……ふふっ」
どうやら椎名の笑いのツボを押さえたらしい。多分、笑いのツボを押さえることに関しては一番得意だと言えると思う。
「椎名さん……」
旭は、なかなか笑いの止まらない椎名へ呼びかける。
思えば、好きな人に自分は怪物と呼ばれていましたと暴露するなんて、まず有り得ない。ばかばか、と旭は過去に自分を後悔するとともに叱咤した。
椎名は旭の呼びかけに対して、眼鏡を外し、生理的な涙を拭く。
「あー、ごめんごめん。ポケットティッシュの件もそうだけど、旭くんってさ、本当に面白いよね。そういうところ、好きだよ。可愛いツボを突いてくるからさ、今後も一緒にいて飽きなさそう」
すきって。好きって。
ぼっと旭の頬に火がついた。たとえ恋愛感情の好きじゃないにしろ、そう言われるのは単純に嬉しい。いや、好きと言われたのは面白いというところだけども。それでも、好印象ならギリギリ及第点だろうか。それに、さっきの椎名の言い方だと、また次もあるということだろう。
旭が嬉しさを噛み締めていると、椎名が肘をついて軽く身を乗り出した。
「顔が赤くなってるってことは、旭くんの思ってることほぼ間違いないと思うよ? ねえ、今日は名前で呼んでくれないの?」
椎名の指が、テーブルに乗っている旭の手をちょいちょいとつつく。
「旭くん、呼んでよ。あの時みたいに」
あの時──そう言われて、椎名に抱かれた時のことを思い出した。何これ、ご飯を食べに来ただけなのに恥ずかしすぎる。
京介さん。
と、唇を動かそうとしたその時、店員がジャストタイミングで注文した料理を持ってきた。残念、と椎名がテーブルから退くのに対して、ドッドッと飛び出しそうな心臓を押さえる旭。そして、店員は料理を置くと、別の客のオーダーを聞きに去っていく。
「あ、そうそう。こう俺みたいなおっさんになるとさ、食べたいものも重くて食べられなくなるから、今のうちにいっぱい食べておいたほうがいいよ」
「それで、それを頼みますか……というか、椎名さん……京介さんはおじさんじゃないですっ」
「はは、ありがと。まあ、これを頼んだのは、旭くんにお裾分け出来るかなって思って。美味しそうに見てたから」
ふっと笑った椎名は、平然と料理を取り分けていく。先程までの空気はいったい何だったのか、気にしている間もなくて。
そのあと、椎名からの「美味しい?」攻撃にせっかくの料理を味わうことなんて出来なかった。ドキドキの連続で味なんて忘れてしまったのだ。
しかし、結局は椎名と一緒で楽しいと思えたから、良しとしようと思う旭だった。
End
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