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【番外編2】裸足のシンデレラ 4にしおりをはさみました!
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【番外編2】裸足のシンデレラ 4
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とりあえず、あの場から離れたところまでやってきた。人通りも多くなり、もう少し歩けば、駅も近い。だが、学生の頃よりも体力の落ちていた凛は、少し走っただけで息切れを起こしていた。まだ回復のしていない足腰と、転けた時の痛みとで散々である。そこで一旦、休憩をしようと思い、物陰になりそうな場所を探して壁にもたれかかった。
散々といえば、本当に今日はついていない日であった。紳士的だった道彦があんな……。恐怖が蘇って、凛は先程体験したことを頭の中からかき消した。
(優しくしたらホイホイついてきたから可愛がってやった……かあ……)
まさしくその通りだ。優しくされたらすぐに騙されてしまう。ああ、この人が王子様なんだって決めて、相手のことを深く考えもしないから、あとから罰がやってくるのだ。道彦には最後の最後で痛いところを突かれた。あの言葉が何度もこだまして、気持ちが沈んだ凛はシュンと鼻をすすった。
どんな終わりだとしても過去のことだ。祐馬に助けてもらっただけ、不幸中の幸いだと思っておこう。
そういえば、祐馬はあれから大丈夫だろうか。落ち着いてきた凛は、ふと祐馬のことが気になった。あの場では逃げることしか出来なかったが、助けてもらっておいて逃げるなんて、まったく関係のない祐馬にとっては傍迷惑な話だ。揉めていたらどうしよう。祐馬が怪我をしていたらどうしよう。一旦、気になると、不安が募っていくばかりだった。
お礼も兼ねて早くなにかメッセージを……と、携帯を取り出そうとすると、ポケットの中から着信音が流れいたことに気がついた。相手は祐馬だ。心配で仕方なくなっていた凛は、その名前を見た瞬間に通話へと指を伸ばす。
「もしもし、祐馬くん!?」
『凛、大丈夫? 今、どこ?』
「祐馬くんだぁ……」
声を聞く限りでは問題なさそうだ。安堵で凛から力が抜けていく。
『あ、こっちは無事だから安心して。で、どこ?』
「えっとね……」
凛は周りを見渡した。この辺りは道彦と会うためぐらいしか行かないので、駅が近い以外のことはあまり知らない。コンビニやカフェはどこにでもあるだろうし、と見ていると、本の文字が大きく書かれている看板を見つけた。
「駅からちょっと歩いたとこにある本屋らへん……かな。大きな看板が見えるよ。わかる?」
『わかる。というか、ここからすぐじゃん。なに、まさか戻ってきてるってことないよね?』
「えっ……し、してないよ!」
『それならいいけど……まだ時間ある? それとも帰る? どっちみち合流したいんだけど』
この祐馬の提案はありがたかった。メッセージより直接、そして、早めに伝えたいと思っていたからだ。それにちゃんと会って、祐馬が無事かどうかも目で確認しておきたいのもある。
「時間ならあるよっ!」
『んー、じゃあ……駅地下の北口付近にカフェがあるんだけど、そこで集合しよ』
そこで通話は終わり、祐馬のいうカフェに向かうことにした。
途中、携帯で地図を確認しながらもカフェに到着すると、まだ祐馬は来ていないようだった。さっきの口ぶりから祐馬のほうが詳しそうだが、やはり距離を考えると、凛のほうが早かったようだ。
外から店内の様子を見てみれば、夜ということもあって席が空いている。凛は中に入らず、外で待つことにした。ただ今は早く祐馬に会いたい。まだ安心しきれない気持ちを落ち着かせたかった。
それから、十五分ほどが経過して、遠くから祐馬らしき人が見えた。瞬く間に凛の表情がパッと明るくなり、足が祐馬へと動く。祐馬も凛に気づいたようで、ひらひらと手を振ってくれた。
「祐馬くん!」
「お待たせ。外で待ってたの? 中で待ってても良かったのに」
「なんか……祐馬くんの顔を一秒でも早く見たくて」
大まかに見た感じでも、怪我をしてる様子はないようだ。ようやく揃った安心材料。凛はほっと胸を撫で下ろす。
「大丈夫。警察って言葉を出したら、急に態度が変わったからね……案外楽だった。これ凛の荷物ね」
すると、祐馬がニッと笑って、凛に見せるように鞄を取り出した。
それは道彦から逃げるのに必死で、ホテルに忘れていたものだった。財布も鍵もそこに入っていて、実質、今の凛は携帯しか持っていない。ここまでの間、逃げること、祐馬のことばかり頭の中を埋め尽くしていて、やっと自分の鞄を見ることでハッとそのことに気づく。
「あ! そうだった、荷物! もう祐馬くんには頭が上がらないよ……今度なにか奢らせてください」
「お、いいねー。凛とはあまり会わないし、たまにはご飯でも行こうか。まあ、まずはカフェに入ろう」
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