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この為にやってきたんだ
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池袋、サンシャイン広場。
まだ朝の9時半だというのに、僕らのブースの前にかなりの人だかりが出来ていた。
「おはよハルくん、レンくん」
アキラ先輩と西村先輩は、僕らを見つけるなり、売り子の場所から退いた。
「ごめんね、昨日と今日連続で頼んで」
アキラ先輩は、そう気を使って言葉を取り繕う。
「朝は何もすること無かったんで、大丈夫です」
僕がいうと、レンは下を向いて欠伸した。
やっぱり乗り気じゃないみたい。
僕らが売り子の引き継ぎを済ませると、先輩方はそれぞれの仕事に取り掛かる。
「僕お客さんの列、整理してくるね」
アキラ先輩は、ブース前に乱雑に集まっている結構な数の女の子達をうまく誘導して綺麗な列に並べた。
「俺も印刷会社の人がもう来るから受け取りに行ってくる。売り子任せたわ!」
後に残された僕とレン。
「帰りたい…」
ため息をつくレン。
「ほうら、シャキっとする!」
僕はレンの背中をバシンと叩く。
眠気から猫背になっていた彼の背中がピンと伸びた。
さて。
騒がしい一日が、今日も始まる。
_____
「ハルお兄ちゃーん!」
毎年買いに来てくれる小学校低学年くらいの女の子。横にはお母さんらしき人も一緒だ。
レンは小さい子に弱い。
この子を見る彼の目は、心なしか笑っているように見えた。
女の子が手に取ったのはレンが撮った『青春』の写真集。
これには写真部全員が、各々好きなことをしている瞬間や部全員で何かをしている場面が収められている。
僕はこれが一番好きだ。
レンにしか撮れない一瞬の写真がここにはたくさん収められているから。
「これください!」
僕がメッセージを書き込んで彼女に手渡しをすると、笑顔で受け取ってくれた。
「私ねお兄ちゃん達の写真、とっても好きなの!」
この言葉が聴きたくて、僕はここにいるのかもしれない。
心が温かくじんわりとするのを感じた。
_____
正午を境に、列の待ち時間が一気に増えた。
昨日の、ぼんさんの一件があってから、興味を持った人が駆けつけたらしい。
同時に会計係りを務める僕は、お昼の休憩に売り上げを計算して酷く驚いた。
部長にそっと伝える。
「13時の時点で売り上げ冊数が700を超えました」
昨日、急遽部長は印刷会社に連絡して写真集の追加分を頼んでくれた。
前年比は比べるまでもない。
現時点で、今年度は過去最高に売り上げている。
「もういっそ、本場のディズニー行っちゃいましょうよ」
午後から応援に駆けつけた島くんが、コンビニ弁当を食べながら冗談半分でそう言った。
「欧米か!」
部長がツッコむ。
それに売り子をしていたアキラ先輩が釣られてが笑った。
なにげない会話1つ1つが彼らといたら、生きてくる。
やっぱり、この部に入ってよかった。
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