アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
-
夜景は見えないけど、遠くに見える漁船の明かりが綺麗だった
食事も美味しそうだけど、余り食欲は無い
翔も同じみたい
全然料理が減っていないし、ずっとワインを飲んでいる
「翔、少しは食べないと」
「お前もな」
「うん・・・・・じゃ食べるよ」
「ああ」
見慣れた料理だから感動はしないなんて言ったら怒られちゃうかな
でも、そんな事はどうでもいいね
「お前は毎日食べてるから嬉しくなかったな」
「そんな事無いよ!一人で食べるより全然美味しいし」
「一人?」
「うん、俺の両親はほとんど家には戻らない人だったから・・・・・小さな頃からずっと一人だった」
「そうか」
「お金があっても、親がいても幸せじゃないなんて言ったらバチが当たるよね」
「そんな事は無いと思うぞ」
「えっ?」
「人間の幸せの器はその人間が決める物だから・・・・お金が全てでは無いだろうしね」
「うん・・・だから俺は今幸せだよ」
「俺も」
どんなに温かい料理でも、一人で食べると冷たく感じる
味もよくわからないまま生きる為にただ食べるだけ
夜が来るから眠って朝が来たら起きる
そしていつもと同じように学校へ行くだけの毎日
ずっとそうだった
「このサーモン美味しいぞ」
「うん」
翔が食べだしたので俺も食べる事にした
この料理はとても美味しいと感じた
ゆっくり食事をして今度はお風呂に入った
屋上の露天風呂はすごく寒かったけど、星が綺麗だった
ずっと二人で見ていたいと思った
でも、それは許されないんだよね
時間は確実に進んでいるんだから
しっかり温まって、部屋に戻ると翔が言った
「スマホから居場所がばれると困るから」
「そか、はい」
スマホを渡すと、翔はそのままテーブルの角にぶつけてスマホを壊した
別に後悔はしていない
むしろ捜されて離ればなれになる方が辛い
その後、言葉を交わさないまま俺達は夜中まで抱き合って乱れた
そうする事でしかこの不安から逃れられないと思ったから
こうして肌を重ねている時間が一番安心できたし不安も少しだけ薄れた
子供だと思われても仕方が無い
でも、何だか不思議
だって来月にはもう俺達は死んでいるんだもの
こうして普通に会話して抱き合っているのにね
死ななくてもいい方法も考えてみたけど、やっぱりだめみたい
俺達は若すぎた
何かをやることすら出来ない未成年
普通の家庭なら、大学入試とか就職とかで忙しいんだろうな
相談するような親はもういない
親戚はいるけれど結果は相談する前から見えている
そんな事を考えていると、俺を抱きしめていた翔が小さな声で言った
「死ぬのが怖い?」
「・・・・・・・・・・・はじめてだし、よくわからないけど・・・・少し怖いかな」
「俺もだ」
「そか」
「だったら死ぬなと言われそうだけどね」
「かもね」
「お前は言わないの?」
「俺は翔に従う・・・死ぬのなら着いて行くし、生きるのなら俺も生きる」
「じゃ、お前は死ぬな」
「それは嫌っ!そんな事言わないでよ・・・・・死にたくないとは言っていないじゃない」
「そうだけどさ・・・・お前は俺に付き合う必要は無いと思うし」
「・・・・・・・・・・・・・・・じゃ一つ聞くけど」
「うん」
「一人で死ぬのは寂しくないの?」
「えっ?」
「どうなの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・寂しいな」
「だから俺も一緒に死ぬんだよ」
「お前・・・・・」
「それにね、もう17年も生きてきたし」
「少なすぎだろ」
「いいんだ・・・・・俺はそれでいい」
「・・・・・・・・・・・・・俺も」
「もし、生まれ変われたら今度こそ幸せになろうよ」
「生まれ変われないだろうな」
「でも、いつかは生まれ変われるかも知れないじゃない」
「だな」
「俺、今度は普通の家庭に生まれて普通の生活がしたいな・・・そして翔とまた巡り合う」
「俺は罪を犯しているから当分生まれ変われないかもな」
「それでもいい!また俺が生まれ変わって翔を待つ・・・と言うか自殺した時点で同罪だよ」
「かな」
「ふふ」
死んだらどうなるのかなんてわからない
だから怖い
生まれ変われるかなんてわからない
ずっと闇の中かも知れない
でも、記憶だけは残して欲しい
翔を愛した記憶だけは・・・・・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 15