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幼き日のウレイ(4)にしおりをはさみました!
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幼き日のウレイ(4)
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ガタガタと部屋の物が揺れ始め、6畳ほどの神器の練習専用に作られた筈の結界がピキーンと破れた音がした。
「結界がっ!」
鉄平の兄が急いで立ち上がり、恐怖で怯える理人と我が弟を抱きかかえ部屋を出ようと障子扉に手をかけると、バチッと電流のようなものが走り、脱出を阻まれた。
ほかの全ての障子扉に手をかけても変わらない。
鉄平の兄の額には汗が浮かび、手には火傷が出来ていた。
部屋の中央に身を寄せ合い、鉄平の兄に抱きしめられ、理人はどうにか突破の方法を考える。
鉄平は目に涙をいっぱい溜めていたけれど、歯を食いしばり耐えていた。
なおもガタガタと部屋が揺れ続け、ついにミシッと部屋の柱にヒビが入った。
これはまずい。
そう思った時、鉄平の兄が息をすっと吸い込んだのがわかった。
「時の花黄昏に揺れ想うのは守護の女神敬愛の証……」
流れるような歌声が、響き渡る。
「に、兄ちゃん!」
「やめろ、悠平!」
理人と鉄平は賢い。
だから、この詩が歌う者の命を吸い取り発動される、最終手段の結界であると言うことを知っていた。。
「時の花逢魔刻に囁くは守護の女神信頼の証……」
「兄ちゃん!」
「悠平、死んでしまう!……チッ。」
「時の花薄明の刻に輝くは守護の女神忠誠の証……」
必死に止めようとする可愛い弟鉄平と、護るべき神の子理人。
それに優しく微笑んで、慈しむように鉄平の頭を撫で、額を合わせる。
顔色が悪くなって、苦しそうにハクハクと息をする理人の唇に、人差し指を当て背中を撫でて微笑む。
「時の花始まりの刻に終わるのは守護の女神に刃向かう悪。」
最後の節を歌い3人を囲む結界が完成した。
「兄ちゃん!兄ちゃん!兄ちゃん!」
「落ち着け鉄平、大丈夫だから。父さん達が、必ず助けに来てくれる。」
「にいぢゃー。」
今まで我慢していた涙がダバダバと目から落ちて、鉄平は大号泣する。
そんな鉄平を悠平はよしよしと片手で抱きしめ、頭をポンポンとする。
鉄平がひとしきり泣いて大人しくなった頃、もう片方に抱えていた理人の体がぐっと重くのしかかった。
「理人様!?」
慌てて確認すると、ぐったりと荒い息を繰り返し、既に意識はなかった。
「リト!兄ちゃん、リトが!」
「落ち着け鉄平。……何故……っ!……理人様!」
よく注意しないと感じ取れないほどだが、僅かに鈴の音が聞こえる。
辺りを見回すと、結界の周りに無数の花びらが舞っていた。
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