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記憶を無くした和海は大人しかった
首輪を付けたウサギ達は戸惑っていたみたいだけどね
「和海、一人なの?」
「翔」
「危ないねー」
「危ない?」
「冬矢がいないし、襲われるかもよ?」
「ご冗談を」
「気が荒い奴らもいるしね」
「その時は逃げます」
「和海が逃げる?マジ?」
「おかしいですか?」
「いや、まぁ・・・そうなんだ」
和海の瞳に嘘は無いような気がした
襲われたら簡単にねじ伏せられる力を持っているのにね
ましてや、逃げるなんて有り得ない言葉だった
「じゃ、俺は行くから」
「はい」
和海には悪いけど、まだ信用していない
一人になった和海を見つめ、合図を送った
三人いれば十分か
何も出来ずに襲われたらそれはそれだ
冬矢はいないし今がチャンス
腕を掴まれた和海
振りほどけないみたい
まるで闘犬に囲まれた子犬みたいだ
人気のないチャペルに連れて行くように言ってあるからもう少ししたら様子を見に行くか
「ん?」
和海が一人で戻って来た
どう言う事だろう
急いでチャペルに向かうと、三人共気を失っていた
「うーん」
「翔」
「繭、どう思う?」
「記憶が無くても体が覚えているとか」
「成程ね、防衛本能か」
「和海は合気道3段、他の格闘技も・・・だけど」
「だけど?」
「僕が知っている記憶の中では、和海が服に泥を付けた記憶は無い」
「そうだったな」
だけど、今は泥だらけだ
人に見下される事は大嫌いな筈だし、ましてや泥を付けられたら殺されるレベルなのにね
やはり必死だったかも知れない・・・と言う事なのか?
そう考えると、すこし哀れに見えて来た
「僕は生徒会が忙しいからどうでもいい和海には構っていられない」
「だな」
繭の言いたい事はわかった
今すぐどうのとかはしないと言う事
「冬矢が来た」
最初は和海の姿を見て驚いていた
そしてハンカチで泥がついた顔を拭いてあげていた
二人で笑っている姿を見て、昔を思い出した
そう言えばみんなで笑っていた時もあった
「ところで、燕羽は?」
「ここに居るし」
「うわっ!びっくりした」
いつの間に来たんだろう
全く気付かなかった
「冬矢さんの気持ちはわかるよ、和海さんが大事な事はね・・・でもさっ!」
「はいはい、言いたい事はわかるから」
「事故の時からずーーーーーっと和海さんと一緒!ずーーーーーーーーっとね!!」
「わかったから」
「和海さんが羨ましいな」
「何もわからない学園に置き去りは出来ないだろ?」
「そうだけどさ」
「もし、記憶を失っているのならこの学園にもなじめない事だらけだと思うし」
「いつからそんなに優しくなったんだよ」
「爪と牙を持たないライオンに鞭を振るえって?」
「むーーー」
俺達の姿に気付いた二人が近付いて来た
冬矢にはお見通しみたいだ
繭はそれに気付き、その場を去った
「これはお恥ずかしい姿を」
「大丈夫?何かあったの?」
「いえ、大した事では」
「そうなんだ」
「転んだとか?でも会長様が転ぶわけ無いか」
「会長は繭ですよ?」
「あ、そうだった」
相変わらず、おバカだけど質問はいい所をついていた
でも、和海は顔色一つ変えずに繭が会長だと言った
「翔・・・」
「冬矢、気持ちはわかるけど燕羽を放置って言うのもいただけないかな」
「・・・・・・・・・・」
「燕羽なら襲われてもいいわけ?」
「そんな事はない」
「俺だって暇じゃない、燕羽のお守りは出来ないんだけど」
「すまないと思っている」
「燕羽さん、すみません・・・冬矢、私は一人でも大丈夫です」
「そう言う訳には行かないんだよ」
燕羽さん・・・?
それを聞いた燕羽も目をぱちくりさせていた
「いいよ、和海さんはまだ退院したばかりだし、冬矢が傍にいてあげて」
おいおい、さっきの愚痴は何だったんだ?
「すまない」
「俺は別に和海に何かあってもどうでもいいけど」
「翔、昔の貴方はそんな言い方はしなかったのに」
「ほんとだよなー、どうしてこんなにひねくれちゃったんだろうね」
お前達のせいだ
お前と、父親の・・・何て言ったところでね
今は意味が無い
「燕羽、メロンパンありったけ買って来い」
「何それ!パシリ?」
「屋上で待ってるから」
「もう!」
売店に向かう燕羽を見届け、和海に言った
「学園に戻ってから怪我ばかりだね」
「翔」
「これからも気を付けてね」
そう言い残し、背中を向けた
憎しみを忘れる事なんて出来るのだろうか?
殺すつもりの相手だった
簡単に昔受けた屈辱を忘れる事は出来ない
だけど、今はフェアーじゃない
本当にイライラする
和海の記憶が戻ればこのイライラも消えるのだろうか?
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