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「っ……」
ユーリの口から名前を聞いた瞬間、心臓がズキンッと音を立てて痛みが体中に回る。
どうして彼がここに?俺に別れの言葉でも言いに来たのか?
ずっと会いたかった人がすぐ後ろにいる。
でも会いたくない。
顔を見てしまえばきっと醜い想いが溢れ出し、何を言い出すのか自分でも予想が付かない。
今はただ……そんな自分が恐かった。
「ユーリ……、どこでもいいから…俺を連れてって…」
「!いいよ、立てる?」
ユーリに支えられて震える脚を何とか立たせ、俺は彼の胸に額を預けた。
逃げたい。逃げたくない。
交差する二つの想いを投げ出した俺を包み込むようにユーリが腕を回す。
「スバルっ…!」
「っ、ユーリ…早く…ッ」
「分かってる。…ブラッド。スバルはあんたより俺を選んだんだから、余計な手出しはするなよ」
「てめぇ…っ、そいつに何を吹き込みやがった!?」
「人聞きが悪いなぁ。俺は本当の事しか言ってないって。"あんたはスバルを捨てたんだ"ってな」
「!?違う…!俺は────」
「ユーリ!!」
「はいはい。じゃあねブラッド、お大事に」
「待て…っ──!スバル……っ!!」
ユーリが片手に持った箒を空へと浮かせ、俺は耳を塞ぐ代わりに彼にしがみついて堅く瞳を閉じた。
そしてブラッドが俺を呼ぶ声は次第に遠ざかり、それはもう聞こえない。
「もう大丈夫、今の彼は飛べないから追ってこないよ」
「……ごめん…っ」
「なんで謝るの?どんな状況であれ、君が俺を選んでくれた事に変わりはないんだから…嬉しいんだよ、俺」
顔を覗き込む俺に、ユーリは嬉しそうに声を弾ませる。
・・・ 違う…!俺は──── ・・・
ブラッドは何かを伝えようとしてた。
その声が耳から離れず、俺はまた瞼を閉じてズキズキと痛む胸の鼓動と共にユーリに身を委ねた。
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