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「望…み…?」
「──そうだ。お前の望みだ」
木の葉を揺らす風も、遠くから聴こえていた川のせせらぎも遠ざかり全ての音が止んで静寂に包まれる。
直接意識に問いかける様なその男の声は俺の弱い部分を簡単に引きずり出した。
「ブラッドを……俺だけのものにしたい…。誰にも触れられないように…、誰にも…届かないように…」
口が勝手に言葉を連ねる。
俺の本当の心の闇は"これ"だったのか。
俺の目に映るブラッドはいつも完璧で何もかもを手にしていた。
プライドも力も人を惹き付けるだけの魅力も。
正反対の俺は"いつか彼が離れていく"と不安だった。
どうして彼は俺なんだろう。俺には何もないのに。
だからこそ俺は母さんの事が知りたかった。
他人に劣らない何かを自分の中に見い出す為に。自分に自信が持てるように…。
男は俺の言葉を聞き、嬉しそうに唇を引き上げた。
まるで"聞き遂げた"と言わんばかりのその表情に不安が一気に襲いかかる。
「スバル!!」
「っ──!!」
後方から彼の声が聞こえて後ろを振り返るがまだ姿は見えない。
その瞬間、前方に近付く気配がして目を戻すと目前まで迫ってきた男が俺の額に手を翳す。
「叶えるがいい。お前にはそれだけの力がある。従順に欲に従え。それが俺達だ。」
「俺、達…?」
「そう。"俺達"だ。」
その言葉が指しているのは……俺の事…?
「──おい!しっかりしろ!…っスバル!!」
「!…ブラッド…」
肩を何度か大きく揺さぶられ我に返ると男はどこにも見当たらず忽然と姿を消していた。
俺は夢でも見てたのか?
「何があった!?」
「……何も」
幻覚でも見ていたのかもしれない。
そう思った俺は説明の仕様がなく、彼に伏せる他無かった。
するとブラッドは怒りを含んだ目で俺を睨み付け、眉を吊り上げる。
「嘘を吐くな!なんでお前はそうやっていつも隠そうとするんだ!そんなに俺は頼りねえのか!?」
……違う。
「言いたい事があるならはっきり言え!俺はそうやってウジウジしてる奴が嫌いなんだよ!」
……嫌わないで。
「妙な気配が残ってるんだ、誰かいたんだろ!何を話した!?」
・・・欲に従え・・・
「っ!うッ……ぐ…っ」
「なぁブラッド……俺だけのものになってよ…」
まるで観望者の気分だ。
自分が何をしているのか理解できない。
ただ、手の中に彼の首がある。
そして彼の脈が皮膚を通して手に伝わってくる。
暖かくて、心地よくて、嬉しくて…。
俺はそれをもっと感じたくて両手の力を更に強めた。
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