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「2人共いつ頃戻るの?」
「まだ分からねぇ。けど、次の満月までには戻ってくるつもりだ」
「なら予定通りね。あの子には私から伝えておくわ」
翌晩。
家を出る前にブラッドとリズさんが交わした会話に俺は疑問を浮かべた。
でもその時には問い掛けはせず聞き流していたが、箒で空を移動してる最中再び思い出し、世間話の1つのつもりで今度は聞いてみた。
「なぁ!さっき言ってた【次の満月】って何かあるの?」
「ん?あぁ、リズと話てたやつか。あれは血役の話だ」
「"血役"??」
「おう。俺ら男の魔女の本来の役目は何だった?」
「えっと…………っ!!」
「そういう事だ。満月の晩から3日間は戻らねえが大人しくしてろよ?」
男の魔女の役目。
それは種族の血が薄まらない様に子供を設ける事。
希望する魔女がいれば満月の夜から3日間続けて行為に及ぶと、以前リズさんに教わった事がある。
でも実際にブラッドがそれに出かけるのは今回が初めてだ。
・・・おいで・・・
「っ───おい!!」
「…っ!?」
身体から力か抜け、ブラッドの胴体に抱き着いていた腕が一瞬彼から離れ視界が傾く。
でもそれは咄嗟に動いた彼の腕によってすぐ様引き戻された。
「何考えてやがる!?しっかり掴んでろ!この高さから落ちれば一溜まりもねえぞ!」
「……ごめん」
これは男の魔女なら誰だってする事だ。それは分かってる。
そう理解したつもりでも実際にそれが迫れば焦りと拒絶が胸に渦巻いた。
…俺のものなのに…他の人を抱くなんて…。
今まで一度だって口にした事のない想いを抑え込むのに必死になっていると箒はいつの間にか高度を下げ、俺達は暗い森の地に足を着けていた。
「少し休む」
ブラッドは一言そう言って大きな木の根元に腰を下ろした。
さっきの事を咎める訳でもなく、彼は沈黙を守り俺から目を逸らしている。
俺…嫌われたのかな…。
「どこへ行くんだ」
「ちょっと…その辺歩いてくる」
「あまり遠くへは行くなよ。探すのが面倒だ」
「っ…!だったら……、探さなきゃいいだろ!」
「!?おい!」
俺はブラッドの静止する声を無視して森の中へと足を進めた。
彼が一言多いのはいつもの事だ。
なのにこの時はなぜかそれ一言が胸に深く突き刺さり、なぜか喧嘩腰な言い方になる。
さっきから何かおかしい。
自分で自分がコントロールできず感情が不安定で剥き出しになっていた。
「何なんだよ…っ、俺…どうしちゃったんだよ…!」
しばらく行くと俺は足を止め、堪らず自分に対する憤りを吐き出した。
頭を冷やして冷静になろう。じゃなきゃ彼に顔なんて見せられない。
欲と自制の狭間を行き来していると、ふと前方に違和感を覚えた。
誰か、いる?
「ブラッド…?」
"もしかして追いかけて来たのか?"と考えたがすぐ不可能な事に気付く。
もし彼なら俺の背後から姿を現すはず。
仮に俺を追い越したにせよ、ここは深い森の中だ。
それなら生い茂った草木を揺らす音が聴こえる。だったら動物…?
何の反応も返さない前方の気配を注意深く伺っていれば、それは徐々に恐怖心を煽る様な威圧感を出す。
さすがに鈍感な俺でもマズいという事に気付き一歩後ずさりすると目の前の茂みがガサッと大きく揺れて息を呑んだ。
「っ!?」
「────お前の望みを言え」
夜闇を纏う様に黒い衣で身を包み、頭から被るローブの隙間から見えるその男の口元は不吉な笑みを浮かべていた。
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