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「はぁッ…、はぁ…」
縒れたシーツに埋もれて乱れた呼吸を整えていると早鐘のように打つ心臓の音がやけに耳の奥で響いた。
あれからどのくらい経ったんだろう?
昼間は部屋の中でぼんやりと過ごし、夜になると毎晩のようにアランがやってくる。
それが数日続けば抵抗が無意味なものだと悟り、俺は彼の成すがまま人形のように言いなりになっていた。
それでも一つだけ。
今だ頑なに拒み続けている事がある。
「っ、嫌だ…!いらない!」
「いつまで断わり続けるつもりだ。このままではそう長くは保たんぞ?」
初めの日以来、俺は彼がしようとする延命を断り続けてる。
だがその代わりに生気は大人しく彼に与えていた。
「あんたの言う事はちゃんと聞いてるだろ…」
「死ぬつもりか?」
「…天命を受け入れてるだけだ」
目的のものを飲み終えたアランは今日こそはと少し強引に俺を組み敷いたが、俺が交換条件を守っているだけあって下手に手出しはできない。
魔女として、約束を守る事は私欲優先の彼らですら絶対らしい。
「っ──!!ぐっ……、……ッ!!」
「また発作か」
ここ数日。彼に生気を与えた後は必ずと言っていい程発作に見舞われている。
胸を何がで突き刺されてるような痛みは、毎回このまま死ぬんじゃないかと思う程だ。
それでもまだ生きてる。
俺の心臓がしぶとく鼓動を刻み続けるのはどうしてなんだ?
いつ止まったって何の心残りも────。
「……ッ……」
息ができずに遠退きかけた意識の中でふとブラッドの顔が脳裏に浮かんだ。
本当に俺は未練がましい。
「治まってきたようだな。水を持ってくる、大人しくしてろ」
アランのその声で朦朧としていた意識が現実へと引き戻される。
いつの間にか痛みは治まり、呼吸もできるようになっていた。
だが発作の直後だからか手足はまだ痺れていて、部屋を出ていく彼を視線で追うとある事に気が付く。
彼が部屋を出た後に鍵をかけた音がしなかった。
「……開いてる?」
逃げ出すなら今がチャンスだ。
だが逃げたところで行く宛も無い上、上手く逃げ切れたとしてもきっと長くは生きられない。
だったら動くだけ無駄かと興味が削がれた時、どこからともなくか細い歌声が僅かに聴こえてきた。
「歌……。誰が…?」
歌声なんて何ヶ月振りだろう。
優しく温かいその旋律は体の苦痛を和らげ、俺は吸い寄せられるようにドアの前に立ち、少し開けて廊下を伺う。
「誰もいない…」
人払いでもしたようにしんと静まり返り、聴こえてくるのはあの歌声だけだ。
誰が歌ってるんだろう?なんて曲だろう?
何の考えも無しに漠然とした疑問だけが俺の脚を突き動かした。
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