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夏の日の少年にしおりをはさみました!
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夏の日の少年
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その少年は
炎を背負っていた
タイトルは、焔(ほむら)
その絵は、夏だった。
「わぁ、とっても素敵ね
この絵。」
僕はそうは思わない
この少年は
挑戦的な瞳で
絵の前に立つ
僕を誘っている
とても気味の悪い絵だ
焼けた肌の色
放たれる芳香
流れ落ちる汗
蠱惑的な甘い、あの香り
あぁ、これはある夏の僕だ。
あるひと夏の僕だ。
作.鶺鴒
セキレイ
やはりこの絵は僕だ
数年前の夏休み、親戚の家へ行き
そこで余暇を楽しんだあの夏
ラムネのような人に会った
彼は名を教えてはくれなかった
セキレイと言うのが本名でないと知っていたから
彼は、セキレイは美しい水の流れる川の場所を教えてくれた
彼が描く世界の、アトリエであるベットと、他は画材しかないプレハブ
『セキレイ』
『ん?』
振り返る男の白いワイシャツと長い髪の隙間に
チラチラと白い肌
『俺明後日帰る』
どんな反応をするだろう
名残惜しいと思うだろうか
『へぇ、なら明日
僕のプレハブへおいで
待っているよ』
含みのある笑い方をする
実際いつも含んでいるんだろう
『うん』
翌日、彼のプレハブへ行った
まず起きているかと窓を覗くと
起きていた
セキレイのベットの上に、二人
セキレイと、筋肉質な焼けた肌の男
目が離せなかった
嬌声をあげるセキレイと吠えるような男
裸で汗を流す二人の
温度に脳の奥を焼かれたようだった
優しいセキレイが
甘い香りのセキレイが
物知りのセキレイが
綺麗な絵を描くセキレイが
俺の大好きなセキレイが
知らない男に掻き乱され
見たこともない表情で
聞いたこともない声で
蠢く地中の虫のように
あの夏の僕だ
セキレイは知っていた
知っていたのに僕にあれを見せた
一体どんな気持ちでこの絵を描いたんだろう
僕はあの日こんな顔をして二人の情事を見つめていたのか
セキレイは
セキレイは
あれを僕に見せたかったのだ
あの夏の僕を
あの夏を、まるごと彼の作品にするために
この絵は
あのころ僕らが過ごした熱い夏の記憶
燃えるほど熱い、無意識の劣情。
セキレイのために生きた夏
僕は彼に会わない
きっと記憶の中の方がいいに決まっている
僕は会わない
思い出せてよかったよ
僕を瞳に映したときの
あなたの表情を。
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