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9話 5にしおりをはさみました!
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9話 5
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昼休みも終わり体育祭も後半戦が始まった。
目の前では借り物競争が繰り広げられていて、あれを借してだのこれは何処にあるんだとただでさえ騒がしいのに余計に騒がしくなっている。
「流さっさと帰って来いよー……」
トイレに行くといって千尋は一人暇を持て余していた。
申し訳ないと思いながらも欠伸を連発させている。
そんな時だった。
「千尋っ!」
パンっとスタートの合図を知らせる音がして直ぐにグランドから白谷が名前を呼びながら駆けて来るのが見える。
「え、なに?」
「いいからちょっと来て!」
首を傾げる暇もなく腕を引かれ訪れる浮遊感。
気が付いたときには白谷にお姫様抱っこをされていた。
「ええええ!?ちょ、えエエエ!!」
「よし、掴まってろよ」
「いやいや待てって!意味がわかんな……ひゃーーーーっ!」
全速力で白谷が走り出す。
もう何もかも分からなくて、ただ振り落とされないよう白谷にしがみつくのが精一杯。
(なにこれなにこれ!?なんでオレが白谷にお姫様抱っこされてるわけェ!?)
しかもかなり注目を浴びている気がする。
絶対後で慶一さんやカナ先輩に何か云われる、と千尋は今にも泣きそうな気分だ。
こうなったら無心になるしかないと現実逃避から目を閉じてしまう。
白谷の足が止まったのはゴールの一歩手前。
審判に紙切れを手渡すと受け取った審判の生徒は何故か千尋を見てニヤリと笑った。
「はい、いいですよ」
と、鳴り響くゴールを知らせるピストルの音に校庭が歓声で包まれる。
「っしゃー!さんきゅー千尋。おかげで一位取れた」
「イヤ、オレなんもしてねーし……てかさっさと降ろせって!」
「えー、遠慮しなくていいのに」
(遠慮なんかしてねーよ!)
渋々といったように降ろされ、ようやく足が地面に触れた。
自分で状況を把握した結果。どうやら自分は借り物競争のお題に適していたようだ。
(でもどんな?)
まさかベタに好きな人、とかだったりするのだろうか。
ここは男子校だ、あり得なくはない……
まさか、と白谷を見上げると笑みを浮かべていた白谷が急に真面目な表情に変わった。
「なぁ、千尋。後でちょっといい?」
「え、なんで?今じゃダメなのかよ」
「誰にも聞かれなくないんだよ……その、大事な話なんだ」
誰にも聞こえないようにそっと耳元で囁かれ、不信に思いつつも千尋は告白ではありませんよぅにと願いながら頷いた。
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