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猫事件 陸にしおりをはさみました!
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猫事件 陸
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「でもさ、俺はそんな気がしてたんだよ、ずっと」
坂口が笑いかけながらそういう。
奏の心が痛んでいるのを知っていながらそうしている。
__あああ、俺ってばほんと悪い奴。
坂口は笑みながらどんどん奏に近づいていく。
奏はそれを拒むように後ずさった。
はじめとおわりの距離は同じ。
最初から感じていたことだった。
奏には坂口ではなく、他の誰かが似合うんだと。
もっと良いやつがパートナーになるべきだと。
そう感じるたびに、せめて奏に近づきたいと、奏のパートナーのようになりたいと、誰かも知らないような人間に自らを似せてきた。
でもこれで終わる気がした。
ここで終わらせようとした。
出来ないことと知りながらそうしようとした。
多分これが自分への世界からの報いなんだと。
受け入れるたびに視界が潤んでゆく。
にじんで、奏の表情さえも見えなくなる。
「俺さ、今まで奏に甘えてたんだよね」
「うん」
奏はそれを俯きながらも聞いていてくれた。
また、甘えてしまおう。
最後に甘えてしまおう、そう思った。
「だからね、いつか心を開いてくれるって思ってたんだ」
「うん」
「でも開いてくれないからさ、力ずくで開こうって思って、沢山接触したよね」
「うん」
「迷惑だってわかってた、でも、甘えてた」
「うん」
「ごめんね?」
その時、急に奏は黙ってしまった。
まぁ、受け入れてもらえるとは、坂口も毛頭思っていなかった。
だから、坂口もまた話し始めようとした。
「もうやめろ」
口を開いたところで、奏のその一言に止められる。
「許す、許す、許す許す許す許す許す、から」
奏は今まで伏せていた顔を上げた。
それは、泣いていた。
泣きたいのは、こっちだってのに。
「もうずっと前からなんとなくわかってた、でも許してたっ!
俺もお前に甘えてた、10歳の時からずっとずっとずっとずっとずっとッ!」
がしりと突き放されていたはずの両手をつかまれ、顔を見られた。
「もう、自分を、甘えてる自分を追い詰めんな!」
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