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28話「誘われた」にしおりをはさみました!
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28話「誘われた」
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(告白、かぁ・・・)
ぼんやりと考えながら、体育館へ向かう。
隣では宇田っちと、同じく次が体育である5組の救馬と本原がいる。
地下体育館へ向かうため、冷えて湿気た感じのする階段を降りて行く。下からは誰かの笑い声が響いて聞こえて来た。同じように、俺たちの話す声も響く。
「あ、大ちゃん」
「?」
そんな声が響いて来て、この呼び方は沢野だろうと階段の下を見た。
そう言えば、俺たちの前は8組と7組が地下で体育だったと気がついて。そのまま、沢野の姿を見るなり、滑るように視線を移してその隣を見た。
「っ!」
「宮崎ー。お前昼いなかったけどどしたのー?」
ドンっと心臓に衝撃。
こっちにヒラヒラとふざけながら手をふってきたのは、千田。
「ぁ、」
どうにもさっきの屋上での千田が脳裏をよぎってしまい、言葉に詰まる。
それでもそれと同時に、ひどく歓喜している自分がいた。
ああ、仕方ないよなあ。
俺は千田が好きなんだから、話かけられたり、名前を呼ばれたりしたら、そりゃあ嬉しいんだ。
「ちょっと教室いたー」
あの後すぐに宇田っちが買っておいてくれたパンを食べたので、結局食堂にはいかなかったのだ。
小さなカレーパンを1個。
だから今すごいお腹空いてる。
「なんだよ。ラ○ンしても反応ないから心配したよ」
すぐ傍まで来た千田がそう笑う。
ああ、連絡くれていたんだ。それすら嬉しい。
「今日さー、遊ばない?」
「え?」
階段の途中で立ち止まって、俺たちはそれぞれ話し始める。
「えっと、」
「だめ?沢野たちも一緒にどっか行かない?」
「ぁ、」
2人では、ない。
それに少しガッカリとしつつも、ニコニコと笑ってくれる千田に返すように笑みを作った。
「いいよ。どっか行こ」
そう一言返して、
「後でラ○ンするー」
また階段を降り始めた。
「・・・オサム」
「はい?」
久々に夏生さんが早く帰って来ると言うから、なら気合いいれて夕飯はこの人の好物にしようとキッチンに立っていた。
俺が来てから少し華やかになった家の中。大きめのふかふかなソファに腰掛けて持ち帰って来た仕事の続きをしていた夏生さんが、背もたれ越しにこちらを振り返って話し掛けて来た。
うん。
あの顔はちょっと嬉しい時の無表情だな。
手に持ったスマホを見たまま話し掛けて来た辺り、多分大輝からメールでも来たんだろう。
「息子がおかしい」
「・・はい?」
けれどすぐに少し眉間に皺を寄せてしまった。
せっかく嬉しそうだったのに。
俺は身につけた赤いエプロンで手を拭きながら、スリッパをトタトタ言わせて夏生さんのいるソファへ近づく。
「どうかしたんですか」
「・・・」
「ん?」
無言のままスマホの画面をこちらに向けられて。それを覗き込みながら、画面に表示された文字を読んで行く。
「なっちゃん、今日、早く帰って来て・・・って、何でこれがおかしいんですか」
「大輝はこんなこと言わない」
「貴方ねえ・・」
自信満々な顔して言われても、それ逆に悲しいじゃないですか・・。
そう思いつつ、けれどもその珍しい文面をもう一度眺めてから「うーん」と唸る。
「何か、相談したいんじゃないですか」
「相談は、父親であるオサムが聞くものでしょう。私は男の子の気持ちなんて分からないわよ」
「まずは聞く気を持ってくださいよ」
本当にこの人は・・・。
「・・・私が聞いて、どうにかなるのかしら」
はあ、と溜息が聞こえて。
そのまま、ソファに座り直してしまった。
「自分の息子でしょうに」
「言ったでしょう。分からないの・・触れ合い方が・・」
「・・夏生さん」
スルリと。
背もたれから上半身を乗り出し、後ろからその人を抱きしめる。
「俺がいるから、ちゃんと向き合ってみて。分からなかったらヒントは出すから」
「・・・そうね」
珍しく、ちゅっと。
頬にキスされた。
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