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「 はーい、みんな席につけー。 HR始めるぞー 」
怠そうに教室に入ってきた担任の一声で、今まで集まっていた生徒たちが散らばってそれぞれ席についた。
気のせいかもしれないけど、まだヒソヒソと俺のことを話されているような気がして居心地が悪い。
やめてほしい。
「 みんな新学期が始まったばっかだけどうかれんなよ〜。
1年の手本となるような行動を心がけるようにー。」
1年の手本となる行動、か。
いつも親から言われる
「千里を見習いなさい」って言葉が頭にチラつく。
そんな簡単に見習えるもんなら見習います。
せっかく去年、一年かけてクラスメイトの顔と名前を一致させたっていうのに、クラス替えなんて余計なものがあるせいで
またゼロからスタートだ。
友達がいないわけでもないけど。
でも必要以上に話しをしたりしないし、
決まった相手と行動したりもしない。
でもきっとそんなの友達って言わない。
カリスマ性がある千里はきっとすぐに沢山の友達ができるんだろうな。
千里が入学してきたせいで、校内ですれ違ったりお互いの話題に上がるかずっとヒヤヒヤしながら生活していかなくちゃいけない。
_______キーンコーン カーンコーン
午前の授業が終わり、昼休みの開始を告げるチャイムが鳴る。
4時間の授業の余韻に浸り、空腹を感じながら大きく伸びをすると、腰と腕の骨がパキパキと小さく音を立てた。
疲れたな。
そう思って机に伏せようとした時に、ガラガラと教室のドアが開く音がした。
そして結構なボリュームで聞こえた俺の名前。
反射的に肩を揺らして恐る恐る目線をやると、
見飽きた顔の人物とばっちり目があった。
「 涼っ!!」
「 .......ちさと?」
途端に聞こえる女子たちのざわめき。
教室の入口のとこに立っている男は一気に注目されて、そして教室を騒がせた。
「 ………だ、だれ?あのイケメン……」
「 まって、顔ちっちゃ!!背高っ!!」
「 あ!あいつじゃん!!桜木ってやつ!!!」
......................最っっ悪だ。
千里は人の目なんて気にせずズカズカと教室に入ってきて、
俺の机に手をついて身を乗り出した。
「 おはよ!」
屈託のない笑顔で笑いかけてくるその顔が眩しくて直視したくない。
「........もう昼だよ。」
「 そっか!」
「........何しにきたんだよ。」
「 え、涼冷たくない?チャイムが鳴ってからダッシュで来たのに」
周りのクラスメイトが唖然とした顔で俺たちを見ている。
そりゃあそうか。村人Aの俺と、入学と同時に有名人になった
イケメンが会話してんだもんな。
ってかよく先輩ばっかりの教室に入ってこれたな。
兄の俺がいるとはいえ、ちょっとくらい緊張すればいいのに。
周りの目を気にしない堂々とした態度も、千里のカリスマ性の中の1つかもしれない。
周囲の目が怖い。
けど、敢えて気にしないようにしながら千里に向き直る。
「 ………で、用件は?」
なるべく目立たないようにできる限り小声で聞いたのにそんな俺の配慮をガン無視して千里はよく通る声で続ける。
「 用件っていうか、涼なんか委員会入ってたっけ?」
「..........保健委員...」
「 あ、じゃあ俺もそれにしよっ!」
「 な、 なんで、」
「 だって涼と同じがいいもん、なんでとか言わないで。」
千里の言ってることの意味がわからず、反論しようとしたら
すぐに遮られた。
まるで俺がわがままを言ってるのをなだめてるみたいな言い方でピシャリとはねつけられる。
なんだか俺の方が弟みたいだ。
「 1年生、午後から委員会決めがあるんだけど〜。分かんないことあったらすぐ聞けるから委員会一緒の方がいいでしょ?」
あまりにも当然のように言うからため息が出た。
その「いいでしょ?」は、お前に都合が良いってだけだろ。
同じ委員会なんて目立つだけだし俺にとってはデメリットしかない。
千里はパンっと両手を顔の前に合わせて目をキュッと瞑った。
「 可愛い弟の頼みだよっ、いいよね?」
.............またこれだよ。
こう言えば俺が断らないのをコイツは知ってる。
正確には「断れない」だけど。
実際に拒否したことないないし。
弟の特権と言わんばかりに、いつもこんな風に自分の願いが叶うように上手に誘導してくる。
「 ..............好きにすれば。」
もうどうでもよくなってボソッと吐き捨てるように言うと、
千里は喜んだのか、ぎゅっと抱きついてきた。
「 やった、ありがと!涼大好き!」
クラスの女子達がまたザワッとしたのが分かった。
千里の無邪気な笑顔と行動にキュンとしたのかな。
きっと俺たちは普通の男子高校生の兄弟とは違う気がする。
だってこんな風に触れ合ったりしない。
かなり珍しい兄弟の部類に入るだろう。
多分、昔からなんでも千里の言う通りだった所為か、千里は
世間一般で言う「ブラコン」ってやつになったんだと思う。
でも俺は極力一緒に居たくない。
というか隣に並びたくない。
でもこうやって素直に好意を寄せてくれる千里が嫌いなわけじゃないし、むしろ可愛いと思う。
どんな形であれ、唯一俺のことを1番好いてくれるのは多分千里だけだから。
すっかり俺の身長を越して背が高くなった千里の頭を、腕を伸ばして軽く撫でた。
(こういう俺の行動も、普通は人前ではしないんだろうな)
「はい、じゃあ用が済んだなら早く戻りな。みんな見てるよ?」
「はーい」
千里は嬉しそうに笑ったあと、全力で手を振りながら教室から出て行った。
太陽みたいな千里は物凄く注目を浴びていたが、その太陽がいなくなった今は残った俺に目線が集中し始めた。
つら。
「 やっぱり兄弟なんだ.......」
「 似てるっちゃ似てるかな?」
「えー、そう?」
「弟くん初めて見た!!」
「 仲良すぎだろ....... 」
いや、向こうが勝手に歩み寄ってくるだけであって
俺は別に仲良くしてるつもりはないんだけど。
シーンとした教室に、ヒソヒソと囁く声が所々で響く。
みんなが俺を見てる。
顔が上げられない。
この空気をどうしよう。
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