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9にしおりをはさみました!
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グランドに着くと生徒たちはもう整列していた。
遅れてやってきた俺たちに集まる視線をもろに感じて、
恥ずかしいやら申し訳ないやらでとにかく穴があったら入りたかった。
白石君は何も感じていないような涼しい顔をしていたけど。
「 遅れてすいませんっ!!!」
授業に遅れてしまったので、体育の先生にガバッと頭を下げると、何故か妙にニヤニヤしていた。
それとともに、クラスの男子全員が俺たちを見て笑った。
「 なんだ、お前らカップルかー??」
「 .......へ?」
.......カップル?
何を言ってんだろう。
先生の言葉の意味がわからなくて首を傾げると、
白石君が「.......手 」と言って視線を下に向けた。
白石君と一緒に視線を下げると、ガッチリと繋がれた俺たちの両手が視界に入った。
途端に死ぬほど恥ずかしくなった。
チャイムが鳴った時何も考えずに、とりあえず早くここまで来ないといけないと思って夢中で白石君を引っ張ってきたのだ。
そして手を繋いだままグランドに来たもんだから
一斉に変な注目を集めてしまった。
「 ごご、ごめん....... 」
反射的に白石君の手をパッと話して、慌てて謝る。
多分今の俺はリンゴみたいに赤くなってるだろうな。
思いもよらないところで目立ってしまった。
ほんとに嫌だ。
チラッと白石君の顔を見ると、相変わらず澄ました顔でまっすぐ前を向いている。
どうしてそんなに人の目を気にせずにいられるんだ。
俺なんかこんなにビクビクして周りの目線や評価ばっかり気にしてるっていうのに.......
「 すいません.......俺が着替えるの遅くなって。白石君は待っててくれただけなので悪くないです....... 」
俺が事実を先生に伝えると、了解、と言って名簿にチェックをつけた。
「 桜木は後でペナルティな。」
「 .......はい。」
視線を感じながら、整列している列の中にそっと入り、
体育座りして俯く。
.......あーあ、もう目立っちゃったよ。
今日で2回目の注目。
どちらも結構なアクションで本当に恥ずかしい。
もうメンタルやられたわ。しぬ。
点呼が完了した後、先生がスポーツテストの説明を始めた。
「 今から50メートル走測りまーす。男子は2つに分かれて
持久走組と50メートル走組になるので、出席番号が奇数の人と、男女の体育委員の人はグランドの奥に移動してくださーい。」
はーい、という声があちこちから聞こえて、男子生徒達が立ち上がってぞろぞろと移動しだした。
.......俺は偶数だから先に持久走か。めんど。
その場に残った生徒たちも次々に立ち上がり、持久走用のスタートラインに並んでいく。
俺はその集団の一番最後にさりげなく並び、誰について行こうかなぁとなんとなく考える。
当然スタートラインぎりぎりの先頭の場所取りをしているのは陸上部とか野球部とかの運動部の連中。
ちょっとでも早くスタートきりたいんだろうな。
長距離にスタートはあんま関係ないと思うけど。
ちょっとした小競り合いを後ろからぼうっと見ていると、先生が笛を口にくわえた。
「 んじゃあ始めるぞー、よーい....... 」
ピーッッという甲高い笛の音が響くと同時に、一斉に集団がスタートを切った。
男子は1500メートルだから、グランド7周半か.......
まあ、余裕だな。
このまま順調に半分くらいでゴールしよっと。
特にキツくもない一定のペースで走っていたら、
2位の人とぶっちぎりの差をつけて先頭を行く男子生徒が見えた。
その足の速さに度肝を抜かれる。
......速すぎだろ。
遠目で見てもわかるぐらいの俊足。
まるで短距離並みの速さかと思うくらいのスピードで、どんどん差を広げていく。
.......あれ、よく見たら白石君じゃん。
足速いんだぁ。
ていうかあんなスタートで大丈夫??
短距離じゃないんだよ、1500メートルだよ。
ペース配分できてる?
..............俺のそんな心配は杞憂に終わった。
白石君はペースを落とすことなく走りきり、そのまま1位で
ゴールしたのだ。
すっげ。絶対陸部だわ。.......カッコいい。
白石君がゴールした後、次々に後からやってきた生徒たちがゴールしていく。
みんな疲れ切ってその場に座り込んだり、腰に手を当てて息を切らしたりしている。
俺もちょっと後にゴールして、その辺をぶらぶら歩いていた。
「 ゴールした人から、自分の記録を体育委員に伝えろー。」
先生の声でみんなが白石君のところに群がりはじめた。
一斉に数字が飛び交う。
俺もその群れに入っていって、ゴールした時の記録を、出席番号と一緒に白石君に伝えると、何故かちょっとだけびっくりしたような顔をされた。
なんか変なこといったっけ。
.......言ってないよな。
不思議に思いながら、今度はグランドの奥に移動して、
四列を作ってスタートラインに並ぶ。
そして同じ要領で50メートル走を測った。
やっぱり白石君は速い。
長距離と短距離どっちもいけるんだ。すご。
俺も走り終わり、記録を伝えた後列に並ぶと、
白石君が俺のところにやってきた。
もう全員計測し終わったみたいで、名簿の中には空白は1つもない。
どうしたんだろうと思って白石君を見つめ返すと、彼は真顔でスタートラインを指差して言った。
「 お前もう一回測ってこい。」
.....................。
.......は?
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