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18歳以上ですか?
△智sideにしおりをはさみました!
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△智side
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次の日。
起きたのはお昼でしかも拓真はどこかに出掛けた後。
「…起こしてくれてもいいのに。」
そう言って床に手を伸ばす…けど。
「あれ?」
そうか。
夕べは風呂場で脱いで…そのままベッドに来たんだっけ。
気怠い身体を起こしてベッドから出る。
「…バイト、一時からって言われたから軽くご飯食べれそうだな。」
裸のままクローゼットまで行き服を出して着替えを始める。
そしてキッチンに向かいご飯の支度をしながら拓真の分のオニギリも作って…頃合を見計らって部屋を出た。
うちのマンションから駅までは歩いて二十分くらい。
駅の改札からエスカレーターで上がっていくと二階から上はテナントが入ったちょっとしたショッピングモールになっている。
俺が今日からお世話になるのは、そこの二階奥のジーンズショップだ。
「こんにちは。」
声をかけると店の正面でディスプレイをしていた人がくるりと振り返った。
背は俺より少し高くて…顔は俺より少し幼め?
ブルーのカラコンを入れた大きな瞳がパチッと開かれて。
「昨日お電話いただいた久遠です。」
「あ!キミが久遠くん?待ってたよー入って入って!」
その人は柔らかく笑うと俺の手を引き店の奥に向かってズンズンと歩いていく。
多分この人が昨日電話くれたんだろな…テンション一緒だし。
て事は奏多…さん?
「お兄!久遠くんが来てくれたよ!」
奏多さんが声を掛けたのは俺を面接してくれた、ちょっと恐そうなオニイサン。
キリッと上がった眉に鋭い瞳。
短い金髪を立てて、耳にはジャラジャラとピアスが。
少なくとも俺の回りにはいないタイプだ。
だって…と、脳裏に浮かんだのは芹沢と春日部だし。
「申し訳なかったね、急で悪いね。」
…あれ?
恐い外見と違って…?
そして何より面接の時より声も笑った顔も優しい。
呆けてる俺の顔を覗き込んで奏多さんが声を上げて笑った。
「ほらぁ!お兄の顔とキャラのギャップに智ちゃんビックリしてるよ!」
「い…イエそんな…!」
慌てる俺を見ながら眉を寄せた“お兄”さんは…
「そうか?」
なんて言って試着室の鏡に顔を映した。
奏多さんはその姿を見てゲラゲラと笑ってて…俺はそんな二人を交互に見つめ苦笑いをした。
◇◆◇◆◇◆◇
店の裏でコーヒーを飲みながら仁さんと奏多さんと軽く談笑して仕事の説明を聞きながら店に戻る。
「じゃ、これに履き替えてもらっていいかな?」
そう言った奏多さんに渡されたのは…あのブラピのCMで有名な503!
「智ちゃんお尻のラインがキレイだから、スリムもいいかと思ったんだけどね。」
タグに目をやる。
いわゆるスリムストレートってやつだ。
憧れてたから…履けるのはかなり嬉しい。
「あとね…最近、テナントにヤバい客がくるみたいなんだ。」
眉を寄せて神妙な顔する奏多さんをみつめる。
「女の子とか試着室に連れ込むらしいんだよね。…だから智ちゃんも気を付けてね!」
「…はぁ。」
連れ込まれるのって女の子だろ?
首を傾げると奏多さんが苦笑いを向けてきて。
「智ちゃん…もうちょっと自覚した方がいいよ?」
「え…何をですか?」
伸ばされた奏多さんの細い指が俺のアゴに触れ顔を上向かせられて…。
「可愛い顔してんだから、ヤローに狙われちゃうって事!」
そう言うなり俺の頬にキスしてきた。
「そっ…そうたさん!?」
驚き慌てふためく俺を置いて奏多さんはとっとと店頭に行ってしまう。
「全く…あんなのですまないね。」
頭上からの声に更に驚いて振り返るとすぐ後ろに仁さんが立っていた。
「いっ……いえ、たいした事じゃないんで…っ…!」
まだドキドキしてるのになんとか平静を装う。
「あんなヤツだけど、よろしく頼むね。」
「はい。」
恐い外見とはウラハラな優しい顔で笑んで仁さんは店の奥に姿を消した。
俺は渡されたジーンズを持って試着室に入ると取りあえず履き替えて…鏡の前に立ってみた。
「……なかなか。」
履き心地もいいしサイズもピッタリ。
…これ…欲しいな。
そう思った、瞬間。
シャッ!!
試着室のカーテンが乱暴に開けられた。
「なっ…!?」
そこには色白で黒縁メガネをかけた見知らぬ男の人が立っていて…。
「あ…あの…?」
「そのジーパン、譲ってくれる?」
その人は俺の履いているジーパンを指差しながらジッと見つめてくる。
ねっとりと絡み付くような視線に…俺は寒気を感じた。
「は…あの…これは売り物ではないので、今売り場にご案内します。」
内心かなり焦ってるけど冷静に…それなりに対処しなきゃとそう思って引き攣る顔で笑顔を作る。
「ボクは、キミの履いてるそれがいいんだ!」
…はい?
「ですから…」
「いいから、脱げよ!」
言うなりソイツは土足で試着室に上がり込んできた。
なす術もなく奥に追い込まれた俺は目の前で荒い息を吐く男をただひたすら睨み付ける。
「そんな可愛い顔で凄んでも恐くないよ?観念しなよ?」
ジリジリと間合いが詰められ…伸びてきた手が俺の手首をグッと掴んだ。
「離せ…ッ!」
「大人しくしてれば…痛くしないからさ。」
な…!?
もしかしてコイツが、さっき奏多さんが言ってたヤツ!?
目…すわってるし!
「やだッ!た、拓真ッ!!」
俺はとっさにそう叫んだ。
…すると!
「テメェ…」
聞き覚えのある声が低く低く響いて……
顔を上げるとそこには鬼のような形相をした拓真が立っていた。
「ヒッ!」
変質者が叫ぶよりも早く拓真の腕がソイツの胸倉を掴み…そのままカーテンの向こうへと投げ飛ばした。
ドンッ!
大きな音と衝撃がし、それを追って拓真がカーテンの向こうに走り出す。
身体中の力が抜けた俺はその場にヘナヘナとしゃがみ込んだ。
「…拓…真…」
俺を…
助けに来てくれたの…?
…外はおそらく物凄い事になってると思う。
木が折れる音や布が裂ける音、そして…
泣き叫ぶ声と謝罪の声が聞こえる。
「智ちゃん!大丈夫!?」
カーテンの向こうから駆け付けてきてくれた奏多さんに震える手でしがみつく。
「アイツ…あぁなったら止まんないからね…。」
「え…?」
抱き締めてくれてる奏多さんが溜め息と共に吐き出し俺は…
拓真が最後の一線を越えない事をただひたすらに祈った。
「まぁ、仁兄がいるから平気だろうけど。」
そんな奏多さんの台詞と同時に外で。
「いい加減にしねぇか!拓真!」
「離せ!!」
バキッ!!
何かが折れるような大きな音に慌てて外に出る。
「たくッ!?」
そこには…
泡を吹いて倒れている変質者とグシャグシャに壊れた向かいの試着室と…壁にもたれてる拓真の横の壁に手を突っ込んでいる仁さんがいた。
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