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お兄ちゃん相関図模様
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鮮やかで綺麗な藍色のカシュクールワンピースに、胸元から上の黒の半袖カーディガン。
フリフリの可愛らしい服を着ているわけではないのに、手を伸ばせば届く、この距離で見てもマキが男の子だとは思えない。
綺麗な顔、長いまつげに少し濃いハッキリした目鼻立ちはハーフなのだろう、純日本には見えない。
頭のなさそうなミーハーっぽい態度をしながら、その不思議な瞳は、この場にどんな言葉が必要か、どんな態度が適正か見極めている。
百目鬼が俺に罪悪感から硬い態度なのを和らげ、トゲトゲする俺の心を察知して、毒気を削ぐような不思議な瞳で見つめてくる。
…可愛くて得体のしれないマキ。
一体どんな子なんだ?
百目鬼「営業妨害?じゃあ、襲われたのか」
奏一「いや、出くわした時突き飛ばされたと…」
百目鬼「…奏一、協力させてくれ、俺の顔を見たくないなら、俺の部下を間に立たせる。俺に手伝わせてくれ」
奏一「は?なんだ、罪滅ぼしのつもりか」
百目鬼「俺には、これくらいしかできない…。それより被害が大きくなれば手遅れになるかもしれないぞ」
それは、心底ゾッとする言葉だ。
悪戯程度だったから自力でと思い、張り込みもしたが、3店舗同時には見れず、相手は複数人いると目撃情報もある。
3号店は女性スタッフしかいないから、これ以上野放しはマズイし…修二も……
奏一「……費用は」
百目鬼「いやいらない」
奏一「は?働いてるのはお前だけじゃないだろ」
百目鬼「部下には俺から出す」
奏一「なめんな、お前は修二と和解したんだろ。俺に罪滅ぼしする必要はない。金は払う、キチンと受け取るならお前に依頼する」
百目鬼「…分かった。キチンと契約書を用意して、俺は極力顔を見せないように部下を…」
奏一「聞いてなかったのか、俺はお前に依頼するって言ったんだ」
百目鬼が驚いたように目を丸めた。
俺だって男だ、助けてもらうのに礼を通さない程曲っちゃいない。
驚いた顔の百目鬼は、まっすぐ瞳を見返す俺を見て、驚くほど柔らかく目を細める。
百目鬼「……ありがとう」
マキ「奏一さぁん♪♪潜入捜査なら僕がバイトになりすますよ♪♪飲食経験もあるし♪♪」
百目鬼が礼を言ってきた時、俺は百目鬼に礼を言われる筋合いがなくてムッとした、そしたら、その空気を変えるように、ヘラっとマキが間に割り込んできた。
この子は、修二のように場の空気に敏感なんだなぁ。
百目鬼「黙れマキ!お前は事務だろ!」
マキ「だってぇー♪百目鬼さんの事務所で若くて可愛いピチピチな子は僕じゃん♪それに修二と働きたいしぃー♪」
百目鬼「後半が目的だろ…、貴様は現場には出さない」
……マキは、不思議な空気の持ち主だ。
その場の空気を察してるのは修二に似てるが、修二はその場の空気を変えるだけで、こんな風に一瞬で明るくは出来ない…。
訝しげに眺める俺と目が合うと、マキは、またニコッと可愛らしい顔で笑った。
こうして俺は、営業妨害の犯人を調べるのに、百目鬼探偵事務所に依頼することになった。念のため、修二にはバイトを休んでもらい。女性スタッフだけの3号店は男性社員と俺がローテーションで見守ることになった。
だが………
一人大反対の人間が……
羚凰「納得できません」
店のスタッフの中で、元朱雀の羚凰は、百目鬼の介入に大反対。俺が朱雀をやめた今も、仲間をリンチにした人物として、百目鬼は朱雀の知らない奴にまで恨まれている。
奏一「お前が納得するか納得しないかは関係ない」
羚凰「でも…」
奏一「今までは、ガキのイタズラだった。だが、怪我人が出た。俺たちじゃ待ち伏せしかできない、だから、プロに頼んだまでだ」
羚凰「でも…、俺は奏一さんが心配だ」
奏一「俺か?修二じゃなくて?」
羚凰「修二は奏一さんが守るでしょ、でも、奏一さんのことは誰が守るの?」
奏一「…」
羚凰「俺が守るから」
今まで温厚な犬のような面だった羚凰は、まるで闘犬のように殺気立った鋭い目をした。
流石、元朱雀。それなりに腕に自信があるらしい。しかし、俺は引退してても元朱雀の特攻隊長だ、子犬に守ってもらうほど衰えてない。
奏一「お前、俺の武勇伝知ってんだろ?」
羚凰「はい!」
奏一「俺は、朱雀の右腕百目鬼と対等な力を持ってる。馬鹿にするな、俺はあいつに負けたことはない」
羚凰「ッ…」
俺の心配なんて100年早い。年下に心配されるなんて、修二以外で初めてだ。
奏一「だが…、心配してくれたのは…ありがとな。嬉しいよ、でも、俺は喧嘩で負けたことないんだぞ」
羚凰「はい、それはそれは強かったと…」
奏一「それに、百目鬼のやった事をどんな風に聞いてるか知らないが、あれは俺が奴を病院送りにして、修二に詫び入れて、収まってる話だ。お前が蒸し返す話じゃない。当人にしか分からない事だ。だから。百目鬼が来ても顔に出すな、店のスタッフを守るためだ、異論はないだろ?」
羚凰「…………はい」
そこからは早かった。
俺たちでは待ち伏せも尾行も全く意味を成さなかったのに、百目鬼は一週間で、営業妨害していた実行犯を捕まえた。
百目鬼「首謀者は別にいる。実行犯は小遣い握らされたそこらの不良少年だ」
奏一「首謀者の正体は…」
百目鬼「それはまだ…、暴くのはかなり難しい」
眉間にしわを寄せた百目鬼が、実行犯数人のリストの書かれた紙を指さす。
百目鬼「こいつらは仲間でも知り合いでもない、ちょっとバイトしないかと声をかけられ、犯行は1度しかやってない」
奏一「…なら、なんでこんなに名前が割れたんだ」
百目鬼「俺が捕まえた奴は、小遣い稼ぎが出来ると噂が広まって、友達同士で順番にやってる頭の悪い奴でな。そいつらを順番に締め上げた。そして悪い報告が一つある」
奏一「なんだ」
百目鬼「金を渡してる男も、雇われ者だ」
奏一「…回りくどい…、知能犯か?」
事務所で話しを聞いていると、羚凰が事務所に入ってきた。
羚凰「失礼します。奏一さん、厨房の空調が調子悪いとスタッフが干からびてます」
奏一「分かった。百目鬼ちょっと席を外す」
百目鬼「ああ」
この時俺は気づかなかった。
羚凰と百目鬼の間で無言の睨み合いがあったって事を……。
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