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ひねくれ者の、にしおりをはさみました!
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ひねくれ者の、
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「…。」
「…。」
気まずい…
いつもだったらうるさいくらい話しかけてくる金井が一言も喋らない。
家までの距離なんてそんなにないはずなのにいつもよりずっと遠いと感じてしまう
ジリジリと夏の日差しがアスファルトを熱する
額に浮かぶ汗をカーディガンの裾で拭った。
暑い、早く着かないかな
やっとマンションの前に着いた頃
金井がやっと口を開いた
「なんでハルさんといたの?」
「え、いや居たんじゃなくてたまたま会っただけだ」
「そう…」
マンションに入れば直射日光を受けなくて済む
日陰ってだけで少しはマシだけど涼しい部屋でゆっくりしたい
オートロックのエントランスを開けようとポケットの中の鍵を取り出す
「でも伊澄さん満更でもない顔してたよね」
「は?」
一旦手を止めて振り返った
さっきから、なんだ?
金井にしては妙に突っかかる物言いが気になる
「…。」
「なに、言いたいことあるならハッキリ言えよ」
俯いていて顔色は窺えない
暑いからこんな所で長く話し込みたくないんだけどな
汗が首元を伝う感覚が気持ち悪い
「別に、」
「何イライラしてんのか知らないけど後にしてくんない?早く中入りたい」
にしても、今日ほんとに暑くないか…
日陰に入ってるっていうのにマシになったかと思ったら余計に暑くなった気がする
「伊澄さん、前から気になってたんだけど」
「なんだよ」
暑さのせいか、語尾が強くなる
「それ、今じゃないとだめか?本気で暑くて、っ」
グッ、と腕を引っ張られ、無理やり頭を上に向けられたかと思えば唇に柔らかいものが触れる
それが金井の唇だと理解するや否や、俺は焦って金井を突き飛ばした
「、」
「こんな所でやめろよ」
誰に見られるかもわからない場所でキスなんてして本当に見られたらどうするんだよ
キョロキョロと周りに視線を這わし誰もいないことを確認する
「なに、お前急にどうした?」
「…」
普段は俺の反応とかを考えて俺の嫌がることはしないのが金井だ
明らかにおかしい
暑さで頭やられたか?
「伊澄さんってほんとに俺の事すき?」
「は?」
「だって、あいたいって言ったのは伊澄さんなのにハルさんと一緒にいるし」
「いや、だから、あれはたまたまだって…」
「ほんとに?本当はずっと一緒にいたとかじゃなくて」
「なに、言ってんのお前」
金井はまた俯いてこちらを見向きもしない。
意味、わかんないんだけど
「ハルさんといた時の方が楽しそうだったじゃん。今だってキス拒むし」
「それは、お前がこんな所で急にするから」
「本当はまだハルさんが好きなんじゃないの、さっきも頭撫でられて顔赤くしてたし」
「見てたんなら、声かけろよ」
「出来るわけないじゃん、あんな嬉しそうな顔してるの見たらさ」
訳の分からないことをグチグチ言われてさすがに本気で腹が立ってきた
どうして急にハルの話になる
しかも俺がハルを好き?
それは、前はそうだったけど今は違うってちゃんと、ちゃんと思い出になったんだって
「なあ、さっきから全然話見えないんだけど」
「なんかわかんなくなっちゃった。俺、伊澄さんに会うまでずっと伊澄さんのことばっか考えてて、なんか馬鹿らしくなった」
「は?お前それ本気で言ってんの」
「伊澄さんこそホントのところどうなの?ハルさんの方がいいんじゃな、」
プツリ、と俺の中の何かが切れた
「っ」
パンッ
気づいたら俺の手は金井の頬を打っていた
「え、」
「お前がそう思うなら、そうなのかもな」
金井は何が起こったのかわかっておらず赤くなった頬を指でなぞっていた
視界がぼやける、やめろ、泣くな
「っ、伊澄さん、俺っ」
「もう、いい。お前、今日はもう帰れ」
「いずっ「しばらく、顔見せんな」っ」
ハッとした金井の縋るような声を遮って告げる
なんでだろうな、本当にうまくいかない
ほんと、うまくいかないな
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