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◆にしおりをはさみました!
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◆
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【お前が望んだように、この男は一生お前
だけの主人だ。
だがこの男が死んだり、お前に飽きて捨
てることがあれば、その時はお前の命を
喰らいに来る。
対価に見合うだけの望みは叶うはずだ。
悪い条件じゃあるまい?】
悪魔の笑みが決して優しくないことなど
解っていた。
しかし今までペンの効果を体で知ってき
た岡本にとってそれを契約によって与えた
者ならば、その願いを叶えることは可能な
気がした。
この言葉に頷きさえすれば、欲しくてた
まらない高取は本当に岡本だけのものにな
る。
その誘惑は抗いがたく、岡本の脳裏に大
きな波紋を呼ぶ。
【無理強いはしないさ。
やがてこの男はお前とは違う人生を歩み、
お前のことなど思い出の中に押しやって
伴侶を得、自分の子種を後世に残して死
ぬだろう。
その人としての幸福をお前が潰したくな
いと願うなら、この話はなかったことに
していい】
まるで爪の先だけで肌を引っ掻くような
声が胸をざわつかせる。
胸を焦がす荒れ狂う声を解き放ってしま
いたくなり、それを見た影はほくそ笑んで
さらに言葉を続ける。
【或いは、そのマジックのインクを溢れさ
せるようなことがあれば、この男の命は
俺が喰らう契約だ。
お前の体に書いてきたことを、もしかす
るとそれよりももっとすごいことを誰か
の体に書いてインクを消費しなければこ
の男は命を繋げなくなる。
お前とやがて離れれば、その相手を身近
な別の誰かに求めることもあるだろう。
その時に、それでも後悔しないのならば
このままの関係でも何ら問題はないだろ
う】
鼓動を打つ度に黒い感情が全てを呑み込
んでいく。
影の言うことは十分にありえる未来であ
り、また逆に彼との契約の内容が本当なら
高取が生き続ける限りは誰かの体に落書き
し続けなければならないことになる。
それが別の誰かであっていいのか。
もう迷いはなかった。
「契約、したい。
高取君が誰かの主になるのも、誰かの体
にこのペンで書き込むのも耐えられない。
僕が死ぬまでずっと、僕だけの主でいて
ほしい」
【契約成立だ】
影の身の内から溢れ出した闇が真っ黒に
染まっている彼の首回りに吸いこまれ、そ
の黒の中から筆記体の文章を一瞬だけ浮き
上がらせるとそれすらなかったように彼の
体に吸い込まれて消えた。
そしてそれをじっと見つめているうちに
いつの間にか影もどこかに消えてしまって
いた。
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