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18歳以上ですか?
17にしおりをはさみました!
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17
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いや、これは盗み聞きとかじゃない。断じて違うから
俺の無意味な言い訳をよそに、そいつはポツリ、ポツリと言葉を紡いだ
「そんなふうに考えてくれてたなんて…びっくりしてなんて言ったら…い、いのか…っ、」
「…う、氏原先生?泣いてるの…?」
フワフワの透き通る声は少し篭っていて
少し乱れた息遣い…
語尾は震えていた
生徒のかけた言葉からして、フワフワはやっぱり泣いているんだと察する
扉一枚挟んだ先で、他人と他人が何を話していようが俺には関係ない。それなのに…。
なんか…イラつくな。
ふつふつと湧き上がるこの感情は何だろう。
いい年の男がガキの前で何メソメソしてんだよ
「…っごめん、うれしくってつい…
ぼくも〜〜君が……で――」
聞き耳を立てたのは自分なのに
これ以上聞きたくなかった
この先の言葉をまともに聞くと、保健室に乗り込んでしまいそうで。
フワフワが言い終わる前に踵を返し、早足で職員室へ向かった
ガキ相手に何言ってんだか。学校来て一週間だぞ。
保健室で男の相手して…それが目的かよ。
ショタコンのホモとか気持ちわりーんだよ
生徒なんかどうでもいい
保健室にどんな奴がいようが俺には関係ないけど
この苛立ちは、生徒に手を出す教師なんて…という俺の中のミクロの良心から来たものだろう
まあ勝手にしろよ。
こんな最低なやつ上に報告して即クビにしてやってもいいが
…俺は優しいから聞かなかったことにしてやる
勢い良く職員室の扉をあける。
大きな音に数人の教師は驚き顔で俺を見るけど
んなもん構ってられるか。
おもむろにバックを掴んでパソコンの電源を落とす。
コードごと引っこ抜いてしまいたかったが流石にデータに支障が出ると困るのでシャットダウンしてやった。
そこは大人の俺を褒めてほしい。
「っちょ…高木くん?!何かあった〜?」
隣から腕をつかもうと伸びる手を素早く避けて笑顔を作る。
「いえ、特に。じゃあお先に失礼します。お疲れ様でしたー」
歓迎会なんて行くのはやめだ。こんな状態で飲む酒なんてうまくもなんともない。
早く家に帰りたい。
テレビ棚の奥に突っ込んだゲームや漫画がいくつか思い当たる
そうだ。あんなに寝たんだし今日はオールだな
うん、いい大人が一人でオール。
そう考えるとそれもそれで楽しくなってきた
無理やり思考を変える。
耳の奥にこびりつくのはあいつの泣きながら絞り出すような声。あのあと何を言ってた?
もしかして
‘‘僕も好き‘‘
とか?
あの生徒の名前も言っていた気がするがそんなもの覚えていない
アイツの声が消えない。頭から、離れない、消えない
むかつく。どうしてだ
興味なんてない。持ってない。たまたまそこに居合わせた。偶然話が聞こえた
それだけのことじゃないか――。
ドンッ
何かに思いきりぶつかった
いってぇ…体格的に生徒だろうか。
こんな時間にうろついてたら帰りを急ぐ先生にぶつかるでしょうがー。
……とかいうほど俺も嫌な奴じゃない。
ろくに前も見ずに歩いていた、完全に前方不注意の俺のせいだろう
「あー、悪い。大丈夫かー………っ?!」
「あいたた……あれ、高木先生?」
顔を上げるとそこにいたのは生徒でもなんでもない
さっきまで泣きながら生徒の告白うけてたあいつが
ケロッとした顔でこちらを見ていた。
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