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133にしおりをはさみました!
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133
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氏原side‥₁
熱中症による一時的な失神。
誰よりも知識を持っていて気にしなければいけない立場が情けない。
誰のせいでもなく、完全に僕の体調管理不足が招いた結果だ。
意識を取り戻したときには保健室のベッドで横になっていた。
話を聞いている感じ、僕よりも”わざと”後ろを走っていてくれた渡辺さんが支えてくれたから、僕は無傷で済んだらしい。
むかつく。凄い悔しい
けど、負けを認めざるを得ない状況と
少しの罪悪感に胸が痛んだ。
目を閉じて話を聞いていると、ぽすっと軽い音を立てて肩のあたりが沈んだ。
ふわりと香る匂いから、目を開けずとも
そこに康明が腰を下ろしたことがわかる。
ここに、康明もいるって事は
多分康明にも迷惑かけたんだろうなあ。
馬鹿だなぁ、僕。
呆れられたらどうしよう
なんだか目の奥が熱くなってきた。
じわりと込み上げるそれに抗うだけの気力が今はない。
薄く目を開いて、康明を見上げれば、
ちょうど目が合った。
途端に溢れ出す、涙。
迷惑かけてごめんなさい
謝りたいのに、唇が震えるのを隠すので精一杯。
きゅっと康明のジャージの裾を引っ張る。
強く噛んだ唇からは、少しだけ血のにじんだ味がした。
康明は何も言わず、渡辺さんとの会話も続けたまま、そっと僕の頭の上に手を置いた。
「こー、めい……。」
康明にしか聞こえない声で呼べば、康明はすぐに気づいてくれる。
かなり回復してきた体で、起き上がらずにいるのは
目の前の生徒と真っ直ぐに向き合うことを躊躇っているから。
今までの、あんなに懐いてくれていた可愛い生徒への自分の態度は決してほめられた物では無い。
それなのに、僕を助けてくれた渡辺さんは
今もこうして、康明と話しながらもチラチラと僕の様子を伺っている。
…一度、大きく深呼吸をした。
言えることは、言えるうちに言わなきゃいけない
謝るんだ。お礼も言うんだ。
でも、康明に聞かれている状態では、ズルい自分は都合のいいことばかりを言ってしまうんじゃないかとも思う。
そしたら、今度こそもうずっと
渡辺さんと話す事なんて無くなるのかもしれない。
「…少し、渡辺さんと2人にして?」
康明は、少し驚いた顔をしたけど、すぐにいつものように服のポケットに手を入れて
タバコを吸うと言って席を外してくれた。
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