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18歳以上ですか?
143にしおりをはさみました!
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143
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氏原side..
「あの、高木先生…?」
「高木っち………?」
僕は、今どこぞの女生徒からいただいてきたセーラー服を、康明に突き付けられている。
隣の心ちゃんも、口をあけて固まっていた。
「えっと、だから………ん?」
「聞こえなかったかよ。着ろ。」
「いやいやいやいや、何?それ、どういう事かな?!」
焦る僕の目の前で、康明はさも面倒臭そうな顔をする。
これが、康明の引いたお題に関係しているんだろうか…
目をパチクリとして立ち竦んでいると、不意に康明が
僕の耳元まで口を寄せた。
「幸人にしか頼めない…。他の奴じゃダメなの
お前でなきゃ意味がないんだよ…。」
妙に色気のある声で、熱い吐息を交えた康明の声に
敵うはずもない。
ハメられた…というか、まぁわざとこんな風に言ってきているのはわかってたけど
断れない僕はコクコクと一生懸命に頷いた。
その瞬間、心ちゃんの溜め息と、
康明のクスリと溢す笑みを見た。
そして僕は、こんなお願い聞くんじゃなかったと
大きく、大きく後悔することになるんだ。
着替える為に、保健室に押し込まれるとどこの誰が準備しやがったのかしっかりウィッグも置いてある。
どうせやるならしっかりやりたいと決めた僕は、セーラー服とウィッグを身に付け、半袖はまずいのでカーディガンだけ羽織って外に出た。
そこには康明だけでなく、一連のやり取りを見ていたであろう生徒も集まっていて
黄色い声やド太い叫声が響き渡った。
ま、僕が女装したらそんなもんでしょ。どや。
…じゃ、なくて
僕をこんな格好にした康明は
僕の前から一歩も動けずにいた。
「…高木先生?」
その目は虚ろで、何処を見ているかすらわからない暗い瞳で、康明は呟いた。
「……………幸音先輩……」
沢山の音の中、康明の声は他の誰にも届くようなものではなかっただろう。
でも僕には、聞こえてしまった。
その唇の動き1つさえ見逃さない僕だから。
確かに“しおんせんぱい”と動いた口
鏡を見ている時間はなかったけれど、何となくわかる。
置かれていたウィッグは、色も、長さも、前髪も
全てが幸音とよく似ていた。
僕の瞳に最後に映った日の
あの日の妹そのものだった。
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