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新しく始まった生活はなかなかに大変で思った以上に楽しかった。
部活に入ってない俺は本当は早起きなんてする必要はないんだが…女手がないこの家で家事がまともにできる俺はできない男共のために毎朝朝食と弁当の支度をすることになっている。
ぶっちゃけて言えば。
この家でお世話になるって話しがでた時に唯一出された親父さんからの要望がコレだったわけだ。
両親が共働きだった俺んちでは長男である俺が小さな弟と妹達のために飯を作るのが当たり前になっていたから炊事は俺的にはなんの苦労もない。
だが…とにかく一番面倒なのが。
「圭ちゃん!」
…コイツだ、コイツ。
「そう呼ぶな。」
「えー?」
朝から晩まで…っても多少離れている時間はあるにはあるが、一日の内のほとんどの時間をコイツの相手で終わってしまうってことだ。
俺の自由時間は風呂・トイレ、寝ている間と授業中、そしてバイトの時間だけ。
学校で別々のクラスになったにもかかわらず休憩時間の度にこのアホワンコは俺のクラスに現れるしまつ。
マジで…コイツがめんどうでめんどうでどうしようもない。
「圭ちゃんトコさっき数学だったよね?次は生物だよね?」
「なんでウチのクラスの時間割り覚えてんだよ。」
…全く。
最近は本心からコイツは俺のストーカーなんじゃねぇかとかって思う。
「圭…」
「おい、成田!」
ニコニコ顔の成田の表情が一瞬ピリッとなる。
初めて見るようなそんなヤツの顔は…俺の方に向く時にはいつもと変わらぬニコニコに戻っていて。
「じゃあ圭ちゃん、またあとで来るね!」
「あ、ああ…」
らしからぬ引き際の良さに拍子抜けする。
ヤツが向かっていった先には数人のデカい男共が立っていて、何やら話をしたあとその集団はそのまま廊下の先に消えて行った。
「なんだ…あれ。」
「あの大型犬、瀬能の前以外では闘犬らしいぜ?」
いきなり声をかけられ驚いてそっちを見る。
すると机の横にはいつの間にか……確か、俺の斜め前の席のヤツが立っていた。
「ああ。初めましてになっちまうのかな?何せお前さんに話しかけようにも自由時間はだいたい成田に独占されてて声もまともにかけらんないからな。」
「はは…。」
苦笑いを浮かべる俺にそいつはスッと手を出してきて。
「結城だ。よろしく。」
「瀬能だ。こっちこそよろしく。」
軽く手を握って離すと結城は俺の隣の机に寄りかかってさっき成田が出て行ったドアの方に視線を向けた。
「なにその闘犬って。」
「あ?ああ…俺のダチがアイツと同じバスケ部なんだがよ。入部初日にアイツ、先輩方と一悶着あったんだって言っててな。」
「は?なんだそれ?」
「暴力チョイ有りだが両成敗ってことでお咎めナシで一応カタはついたらしいんだが。」
「……なんだそれ。」
初めて聞く話に呆然。
…つーか…なんだそれ?
俺の前ではアイツいつもあんなだけど?
「…マジで?」
「らしいぜ?俺もお前とここで話してる姿しか見たことねぇから最初は信じらんなかったけどな。」
「いや俺はまだ信じらんねぇけど…」
初めて聞く成田の裏の顔?に疑惑の念が浮かぶ。
…なにアイツ。
俺の前でだけあんなニコニコ顔なのか?
いやいやそれは置いといて、じゃあ今の集団て…?
「結城、もしかして今の…」
「いやわかんねぇが、もしかしたらって気はする。」
サッと血の気が引く。
真相を確かめるべく立ち上がった俺が結城の制止を振り切って教室を飛び出すとそれを追うかのように授業開始のチャイムが鳴り出した。
廊下に散っていた生徒達が自分の教室に戻り始める中を逆走してさっきの…成田と共に消えたあの集団を探し始める。
…俺としたことが。
引き際の良さに呆然としちまってアイツにあの集団との関係とか聞くのを怠った。
俺の前ではいつもあんな感じだからまさか俺以外のヤツの前では…なんて夢にも思ってなかった。
駆けてる足を止め窓から身を乗り出して辺りを見渡す。
「…いない…」
上級生の呼び出しで…しかも同じ部ならやっぱ、だよな?
思い浮かんだバスケ部の部室の場所を脳裏に描いて走り出す。
確か体育会系の部室は…グラウンドのネットの裏にある第二グラウンドの奥、だったか?
上履きのまま外に出て体育の授業中の集団の横を走り抜ける。
途中でウチの担任に見つかって制止されたけど…そんなのはもちろんシカトだ。
土埃を巻き上げながら走り続けて目指す先の部室の棟に到着。
二階建てのプレハブが奥に向かって伸びていてそのドアの前に各部のプレートが貼り付けられている。
ズラリと並んだその中からバスケ部を探す…けど。
「どこだよ!」
数が多すぎてわかんねぇ!
バスケ部どこだよ!
焦る気持ちを押さえながら駆けて見回る…と。
ドンッ!
どこからか大きな音がしてワーワーと騒ぐ声ががうっすらと聞こえてきた。
「成田!?」
その音を頼りに建物の一番奥まで走り“バスケ部”と書かれたプレートを見つけた俺はそのドアを力一杯引き開けた。
ドカッ!
「え?」
開いたそこから飛び出したのは……ヒト?
慌てて駆け寄り倒れているヒトを見…て。
「なりた、じゃない…」
成田とは似ても似つかない白目をむいてるソイツを地面に戻してさっき開いたドアの方に歩いて行く。
うるさかった音はいつの間にか消えて静かになっていて…不安な思いでその中を覗き込んだ。
「…成田、いるのか…?」
「圭ちゃん?」
背後からの声に驚いて思わず後ずさる。
ん?
あれ…?
「なんでお前!?」
「圭ちゃんこんなトコで何してんの?」
きょとんとしてる成田を見上げて俺は目をパチクリ。
え…?
だって…あれ??
「コラーッ!お前らこんなところで何をしている!?」
混乱してる耳に聞き慣れた担任の怒鳴り声が聞こえて反射的にキョロキョロと見渡す。
すると突然手首が掴まれて。
「圭ちゃん、逃げよ?」
「はっ!?」
強く腕を引かれたかと思うと次の瞬間には俺の足は自分の限界を軽く越える動きを強要された。
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