アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
10にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
10
-
僕は、「しおん…」と口の中で復唱する。
「凛を助けた鬼は、しおんって言うの?」
「そう。心を隠すと書いて、しおん。天狗の郷で、俺が崖から落ちた時に助けてくれたんだよ。怪我も治してくれて、命の恩人なんだ」
「ちよっ、ちょっと待ってっ!崖から落ちたのっ!?なんでっ!?」
凛が、「あ…」と気まずそうに僕から視線を逸らした。でも、すぐに僕を見て、苦い笑いを浮かべる。
「…初めて天狗の郷に行った時でね、しかも銀ちゃんと気持ちが通じ合った上に、縹(はなだ)さんが俺と銀ちゃんのことを認めてくれて…、浮かれ過ぎてたんだと思う。実は、落ちてからの数日間記憶を失ってたから、落ちた前後のことは、はっきりと覚えてないんだよ。気がついたら綺麗な男の人がいて、俺を世話してくれてたんだ」
「…凛が色々危ない目に合ってきたって話は聞いてたけど…、本当に死にそうな目に合ってるじゃんっ。銀おじさんはその時何してたんだよっ」
「ぎ、銀ちゃんも助けようとしてくれてた筈だよっ?まあ、今俺はこうやって元気なんだし昔の話なんだし、とにかく青藍落ち着いて」
思わず椅子から立ち上がった僕を、天清が肩を抱いて座らせる。
「青藍、今は鬼のことを聞くんだろ?凛さんの話は、今回のことが解決したらゆっくりと聞こ?」
天狗の郷にある崖は、ものすごく高い。あの高さから落ちたなんて…とその時の凛を思って涙ぐんで振り向いた僕の頬に、天清がキスをした。
「…こんな時に、バカ…」
「だって青藍が可愛い顔をしてるから…」
「えーと、鬼の話の続き、する?」
凛が微笑みながら、遠慮がちに聞いてきた。
僕は、慌てて前を向くと、うんうんと数回頷く。
「なんか邪魔してごめんね?…心隠さんの所には、一週間ほどいたかな。俺が家に戻って来てからは、三回訪ねて来てくれたんだけど。最後に来たのは、俺が高校を卒業した時。それからは会ってないんだ」
「じゃあ、今どこにいるかわからないんだ?」
「うん。心隠さんの家も、正確な場所がわからないしなぁ。ところで、何で急に鬼のことを?舜くんのことと関係あるの?」
「そう。今日学校から朝霧先生が来てさ。あ、この先生は、蛇の妖なんだけど」
「え?蛇?」
僕が言った蛇という言葉を聞いて、凛の身体がビクリと揺れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
133 / 207