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家事当番、いわくにしおりをはさみました!
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家事当番、いわく
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「で、何食べる?」
唐突に日常的な言葉が出てきて俺は理解するのに少し時間を要した。
会話の流れってもんがないのか。
・・・いや、コイツにとってはこの話はそれほどまでに普通の会話なんだろう。
少なくとも食事と並ぶくらいには。
迷ったり、悩んだり、しなかったんだろうか。
「今日は俺が作るぜ。料理には結構自信あんだよ」
「へえ。やってたのか?」
腕まくりをしながら、俺の冷蔵庫のドアを開ける姿を見ながら訊く。
まあ、同居人になるわけだし、家主の許可なく開けるなとは言わない。
「ま、俺って居候生活長いから。何かしら家事できる方がいいんだよ」
「いつからそういう生活してんだよ・・・」
怖くないのか、その不安定さ。
「・・・あー、いつからだったかな、忘れた。まあ結構色んなやつと住んできたぜ?」
「何でまた、今回は同居解消したんだよ」
相手に踏み入りすぎかとも思ったけれど、正直なところ、ここまで自分の深いところを(しかもほぼ初対面で)話したことがなかったのもあって、何だか色々話が聞きたくなってしまった。
まあこの質問は、さっき決められたルールに反してはいないだろう。
「基本的には家主から諸事情で追い出されるか、喧嘩するか・・・あとは、相手に恋愛感情を抱かれたりすると解消だな」
サラリと言ってから、瀧は冷蔵庫の中を見て、『あー』と声をあげた。
「お前、自炊とかしねえの?冷蔵庫空っぽじゃねーか」
見た目が結構チャラい(茶髪にピアスは俺の中ではチャラい判定だ)コイツに言われると若干腹立つな・・・。
「あんまり・・・」
最初はしてた気もするけど、結局スーパーで惣菜を買ったり冷凍食品に頼ったり、って感じだ。
楽だしおいしいからな。
「仕方ねえな、買い出しに行くか」
「じゃあついでにお前の分の食器とか箸とか、他にも生活用品買わなきゃだろ?」
「まあそうだな」
そういえば、コイツ荷物が極端に少ない。
大学のカバンとボストンバッグ一つだ。
「いやー、前の家主から逃げるように出てきたから着替えとかも少ねえんだよなー。ちょうどいいや、買うか」
前の家主とは何があって解消したんだろうな。
この感じだと・・・恋愛感情がどうこうってやつか。
そのあたりの優先度というか重要度は割と分かる、つもりだ。
俺も性行為の強要があれば即交際を解消してきたし。
それは俺の中では譲れないものだから。
それで修羅場になったこともある、けど。
「じゃ、行くか」
そんなこんなで、成り行き上。
買い物とはいっても、いるのは瀧の物なので、瀧の後ろをくっついていくだけだったけど。
それでもやはり言うだけあってこなれている。
食料品を買うにしても、日用品を買うにしても。
やっぱ初めてではないんだな。
俺は安定志向気味だから、こういうその日暮らしみたいな生き方は多分できない。
そういうところでもコイツとは全然違うんだろうけど。
でもその違いは、ある意味新鮮でもある。
嫌では、ない。
不本意ながら。
<***>
買うだけ買って、帰り道。
俺は今まで一人暮らししてきて、そんな生活味ある買い物してなかったから、野菜なんかでいっぱいな買い物袋が少し感慨深いものだった。
二人分、というところを除いても。
「あ、買い忘れ」
「ん?何だよ」
足を止めた瀧に合わせて俺も足を止める。
「先帰っててくれていいぞ」
「いや、すぐに終わるんだろ?」
「まあ・・・」
少し煮え切らない様子だったけど、瀧は小さく、まあ、いっか。と呟くと、近くのコンビニに入った。
俺も後を追う。
一応まだ未成年者のはずだから、タバコとかではないとは思うけど。
瀧は慣れた様子で棚へ向かい、そしてピンクと紫の派手なパッケージをしたソレを手にした。
「・・・それ」
思わず漏れた俺の声に、瀧は何も言わず、例の如く慣れた様子で、恥も照れもなく、会計を始める。
そのパッケージは、実物を見るのは初めてで一瞬何か分からなかったけど。
その、毒々しい蝶とオスメスのマークをあしらったソレは。
「・・・よし、帰るか」
「・・・ああ」
何も言うまい。
ここで何かを言うことは、ルールってやつに背いたことになるんだろう。
スルリとその会計済みの商品は自分のポケットにしまいこんで、瀧は歩き出した。
当たり前のように。
実際、当たり前なんだろうけど。
少しの間無言だったけど、突然
「はは、安心しろって、お前に使うつもりは毛ほどもねえから」
カラカラと笑うそれに、当たり前だろ、と返しながら。
それでも感じてしまう、性のニオイに、俺は目を伏せた。
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