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18歳以上ですか?
誕生日にしおりをはさみました!
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誕生日
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俺が部屋のソファーに座っていると仕事をしていたドストミウルが思い出したようにこちらを見た。
「カノル、君の誕生日はいつだね?」
「はぁ?どうでもよくねぇ?」
「どうでも良くないだろう。君はまだ生身の人間だ、毎年歳をとり成長するのを祝わなくては!」
でたでた、死んでるくせに人のどうでもいい事気にしちゃってアホらしい。別にいい歳こいてバースデイパーティーなんて子供みたいなことされても嬉しいわけないだろ。
「じゃあここにいるアンデッドのヤツらの誕生日祝いとかしてんの?してねえだろ?」
「彼らは屍人だ。」
「俺もアンデッドの仲間だろ、つまり屍人だ。よし、意味無いからしなくていいな。」
「カノル...」
ドストミウルはあからさまに残念というように肩を落とした。
が、少し考えると何故か喜々としてにじりよってきた。
「では、君が屋敷に来てもう少しで1年経つ、そのお祝いをしようではないか!」
「嫌だ。」
俺は低めに近づいて来たドストミウルを蹴り飛ばした。もちろん加減はしてる。
「やかましいんだよ、俺がそういうの嫌いって知ってんだろ!ったく、面倒くせえ王サマだな。」
そう強めに言うと死の王はまた少し小さくなったように見えた。
ドストミウルはしばらくそうしていたが、少しだけ顔を上げだ。
「じゃあ、せめて...私が毎年君に祝いの言葉をかけることくらいは、許してくれるかね?」
俺は下目で小さく睨んだ。
「いいぜ。でもな、俺はアンタのお祝いに対して毎年こう言ってやるよ。アンタは今年も俺を殺してくれなかったんだね残念だな、って。」
「...カノル、私は。」
「なーんてね。個人的にお祝いしてくれるんなら許可してあげるよ。」
不安そうにこちらを見ていたドストミウルにカノルは舌を少し出して笑っていた。
「ケーキならフルーツいっぱいのタルトにしてね。あと、プレゼントはまた色違いのお高いピアスでも買ってもらおうかな。」
そうやってからかったつもりで笑ったのに、ドストミウルは何故か優しく抱きしめるように体を寄せた。
「ありがとうカノル。君の要望通りにしよう。」
「えっ、うん、まあ好きにしてよ。ちなみにありがとうは何に対して?」
「君を祝う事を許可してくれたことに対してだ。」
ドストミウルはゆっくりと体を離した。
「私は、君がここに居てくれるという事をもっと感謝しなくてはいけない。」
「甘やかしすぎじゃね。それと俺がここにいるのは他に行く場所がないから、勘違いしないでくれよ。」
「いいやそれは違う。君なら他の生き方だっていくらでも選べるはずだ。それを私が引き留めさせている。」
「出てって欲しい?」
「何処にも行かないでくれ。」
ドストミウルの鋭い回答にカノルはほくそ笑んだ。
「アンタは誕生日って無いの?」
「ああ。もう何年この世に居るのかもわからないのだ、数えるのも飽きてしまった。」
「じゃ、一緒にお祝いしような。アンタも歳をとって毎年おめでとうって。」
「私は歳を取らない。」
「建前でさ。どうせ俺の方が早く死ぬんだから。」
「...」
笑いながらも冷たく言い放たれたカノルの言葉にドストミウルは虚空を見つめた。
それから視線をカノルに戻すとその暖かい手に、自らの生のない手を重ねた。
「二人だけで君が嫌がらない程度に密かに祝おう。君の命が尽きるまで。約束だ。」
「ちゃんと守ってよね。」
カノルは寂しさを含んだ笑みでドストミウルを嬉しそうに見つめた。
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