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最終話
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「しまった」
二人で湯船に浸かっていると、先輩が僕の頭の上で呟く。
「先輩? どうかしました?」
先輩の脚の間に座ったまま、僕は頭上にある先輩の顔を見上げた。
先輩は僕をしっかりと抱き締めたまま、不愉快そうに眉を寄せている。
「写真を残していない」
「写真、ですか?」
僕が鸚鵡返しのように訊き返すと、忌々しそうに先輩が舌打ちした。
「あぁ。中出しされて呆けてるお前に見惚れたくせに、それをデータとして残すのを忘れていた」
「な……ッ!」
心底悔しそうな声をしているから何かと思えば、とんでもない事を先輩は口走っている。
「扇情的な図だった。必ず次の漫画に活かせる最高の一瞬だったって言うのに、俺とした事が……!」
「先輩っ!」
「何だ」
僕に呼ばれて、先輩は不機嫌そうな表情のまま、視線を合わせてくれた。
「そ、そういうのは……恥ずかしい、です」
僕はそれだけ呟くと、湯船に口まで浸かる。
そんな僕の様子に、先輩が不思議そうに反論した。
「写真を撮られて勃起してただろ」
その誤解に、素早く顔を上げて反論し返す。
「撮られたから勃ってたんじゃなくて――」
「あぁ、そう言えば」
「話を聴いてください!」
先輩は激高する僕の事を気にした様子も無く、突然腕に力を籠めた。
それによって、力強く抱き締められる。
「大事な事を言っていなかった」
先輩はそう言うと、僕の目線に合わせるように顔を下げて、細い目を更に細めて……微笑んだ。
「日達」
「は、はい……っ」
こんなに穏やかに笑っている先輩は、初めて見た。不意に、胸が高鳴ってしまう。
先輩は微笑んだまま、囁いた。
「順序は逆になってしまったが、もう一度告白させてくれ」
僕は小さく頷く。
「好きだ、日達。お前さえ嫌じゃなければ、アシスタント兼恋人として、同棲してくれないか」
その告白を、断るだなんて先輩は思っていないのだろう。
だから、こんなに余裕たっぷりで穏やかな笑い方をしているんだ。
「……不束者ですが、よろしくお願いします」
そう答えると、つられて僕も笑ってしまった。
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