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彷徨うもの 51にしおりをはさみました!
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彷徨うもの 51
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アキラの、名目のみの夫たちの妻は意外な事にアキラに対して悪意をもって接するものはいなかった。
アペシュ夫人のターメラのようにアキラ自身に興味を持っているものも少なくないのだ。
シリス夫人でさえ、アキラの置かれている状況に憂慮すらしていた。
彼女はアキラに悪意を持っていないのだ。
「ぜひ、ぜひご一緒に!
楽しみです。 マヘスさん 」
「あれも喜ぶと思います。
どうもありがとう……アキラ殿 」
もう一度、ふたりはお互いの頬に口づけると礼儀正しく身を離し、アキラは後ろを振り返った。
マヘスの隣のネフェルテムが熱い視線を送っていたが、アキラは『後でね』と囁くと先にケプリの元に向かった。
立ち上がって迎えてくれたのは、今度は二人。
スカラベのケプリと、百足のセパ。
メタリックな光沢を放つ色彩を纏った二人。
片や極彩色、片や単色のメタリック・レッド。
特にセパの金属質なドレッドヘアの質感は初めて見るものだ。
「アキラ殿、以前一度お会いしたことのありますね。
私はケプリ……スカラベです。
そしてこちらは…… 」
「は……じめ、まし……て、天女……殿。
私は……セパ。百足族……です…… 」
「すみませんね。
セパは極端なあがり症なのです……
これでも、精一杯勇気をふりしぼって…… 」
「ケプ……リ! 」
二人の遣り取りを見ていたアキラは、うっとりとした面持ちで二人と挨拶を交わすと、それぞれの頬に口づけした。
二人ともが吃驚している。
だが本当に驚愕したのはそのあとの言葉だった。
「ね?不躾なのはわかっているけど……
お願いします! 本体を見せて下さい!! 」
「アキラ!! 」
ヘデデトが次段から叫んでいる。
「あ……とで、宴の……ときに、席……を外して……では? 」
「ありがとうございます! 」
ふたりの会話を聞いていたケプリは、いつになく積極的なセパの態度に不穏なものを感じとっていた。
だが今は、自分のアピールも忘れてはいけない。
「アキラ殿、今回はお土産をお持ちしました。
後ほど、宴のときにでもご披露致します」
もう一度、今度は口角に口づけして……
アキラはネフェルテムの元へいってしまった……
あとに残されたのは目を細めて見つめる二人。
「かわ……い……い…… 」
ネフェルテムの席の手前1mで立ち止まったアキラの前、ゆっくりと立ち上がった隻眼の若君がたった一歩で近づいて、泣き笑いの表情のアキラをその腕のなかに閉じ込めた。
「ネフェルテム…… 」
彼の身長はもうアキラより頭一つ高くて、前回よりも伸びている。
「女神さま……お逢いしとうございました。
お身体の具合はいかがですか? 」
以前はまだ甲高い少年の声だったのが、この短い間に声変わりを迎え、落ち着いた青年の声がアキラの身体をくすぐる。
「ネフェルテムこそ、ここは…… 」
そう言ったアキラの手が左目の眼帯に伸びて……ふれる。
「もう……痛くない? 」
眼帯の上の繊手にネフェルテムの掌が重ねられて、もう一方の手が細腰に回された。
目を瞑ったアキラの唇にネフェルテムの唇が二度三度、優しく食んで離される。
首を垂れて、アキラの頸筋に顔をうずめたネフェルテムのこめかみに、アキラの唇が押しつけられた。
「天女さまっ!!! 」
今、ふたりが抱き合う所から席一つ隔てた場所で、アペデマクの悲痛な叫びが漏れた。
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