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愛しいひと…3にしおりをはさみました!
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愛しいひと…3
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報せを受けたトートが駆けつけて来る、その少し前……
鰐館に滞在していたクヌムがアキラの寝所で見たものは、ヘデデトに上体を支えられて、もう吐き戻すものも無いのに空えずきする、痛々しいアキラの姿だった。
「これは、一体……」
戸惑いを隠しきれず、一瞬躊躇したクヌムはすぐに診察を始めた。
まず、脱水を防ぐ為に水を与えたがすぐに吐いてしまう。
腹痛も激しいようで額には玉のような脂汗が浮かび上がっている。
「クヌム……」
目に涙を浮かべて弱々しく名を呼ぶアキラの、顔色は青白い。
「ああ……アキラ。
一度、横になっていただけますか?」
簡単な設えの夜着をくつろげてクヌムは目を瞠る。
白い、細い腰にはそこを掴んで揺さぶっていた痕が……赤紫に変色している指痕が無数に散らばっている。
幾つかには爪が食い込んだ痕もあって、昨夜の交わりがどれだけ激しかったかが見てとれる。
そこからは……ヘデデトに席を外してもらいかなり際どい……アキラの後孔に指を差し入れ出血の有無や傷の有無を確認する診察をした。
多少の炎症はあったがクヌムの指が届くあたりまでは目立った異常は無い。
次に仰向けになったアキラの下腹を触診した。
そろそろと太い指が優しく肌を滑っていく。
その指がある一点に触れた途端、アキラは悲鳴をあげて痛みに悶えた。
吃驚して薄布の影から顔を覗かせたヘデデトを、押し退けるようにしてターメラとヴァジェトが褥に近ずくとアキラの身体に取り付いた。
暴れて、診察に支障をきたさないよう肩や脚を押さえられたアキラは、今は泣き叫んでいる。
集まり始めた夫たちが悲痛な表情で寝所を窺っていた。
昨夜の宴の後、高台のアヌビス館に戻っていたセテフが、漸く駆けつけてきたのは丁度この頃だ。
「一体何事だっ!!」
テラスから駆け込んできたセテフを無理矢理押し出して、セベクは客間で話の場を持つ。
棟の違う、それなりに離れたこの場所にまで、アキラの悲鳴は聞こえてくる。
痛々しいそのさまに、知らず知らずのうちにセテフの眉尻が吊り上がってきた。
「すまない。俺も詳しいことはよくわからない……
ただ、朝をゆっくりと過ごしていたアキラが嘔吐して腹痛を訴えていると連絡を受けて……。
すぐにクヌムが来て説明があると思う」
「アポピスの仔を孕んだのか?」
「まさ……か?」
顔を見合わす二人の元にクヌムがやって来て、そして語られた今現在の様子にセベクは黙り込み、セテフはその姿を半獣に変えつつある。
「申し訳ない。
今出来ることは暫く様子を見る事、それしかありません……
最悪の状況は腸壁が破れてしまっているかもしれない……という事ですが可能性は低いと思います。
私は腹腔内の出血を疑っているのですが……
もしそうなら、かなり危険です」
悍ましさすら感じる、ジャッカルの咆哮が響き渡る。
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