アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
愛しいひと… 21にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
愛しいひと… 21
-
この洞窟は一本の路が奥まで続くような、そんな形状ではなく複雑に枝分かれした迷路のような、そして所々加工の跡のある、まるで【住居】のような形状だ。
そのなかでもアキラのいる【居室】は特に居心地良く調えられている。
鬣犬が、
『私は少し出掛けます……
くれぐれも……大人しくなさっていて下さいね』
そう言い置いて姿を消した後、すぐにアキラは【探検】を始めた。
まず、部屋の隅にある灯火を手に取る。
足元が岩盤で裸足なのが気になったが……しょうがない。
軽く下っている路をペタペタと歩いて行くと左右に幾つもの部屋がある。
同時に枝分かれの路もあり、アキラは迷わないよう常に右側を進むようにした。
……半人工なのか、かなり奥深くまで続く洞窟に、アキラは以前観光で訪れたカッパドキアを思い出していた。
三叉路に出た事でアキラは引き返す事を決め、元来た路を辿っていたのだが先程は気づかなかった空気の揺らぎを感じ、居室を通り越して進む。
暫く行くと先が明るくなってすぐに外に出てしまった。
鬣犬の言っていた断崖絶壁。
張り出した所から身を乗り出して下を窺ってみると5mくらい下から地上へと伸びる小道が見える。
アキラはすぐに居室に戻ると、敷布を裂き、結び繋いてロープ状にするとまた出口に向かって駆けて行った。
入口近くの丁度良い形状の岩に片端を固定してもう片端を絶壁の下方に垂らしてみる。
先程の小道には少し届かないようだが、この程度なら飛び降りられるだろう……
覗き込んでいたアキラの身体が突然、後ろに引っ張られた。
「う、わぁっ!!」
逞しい腕に腰を掬われ、後ろから羽交い締めにされていて……アキラはこの、脱出の失敗を悟った。
獣人の被毛が頬に触れる。
肌と肌が触れ合った事で鬣犬の怒りがひしひしと伝わってくる。
「姫君は……最初から私を謀るおつもりだったのか?」
今まで聞いた事の無い、鬣犬の凄みのある声。
問答無用で担ぎ上げて洞窟内に戻っていく鬣犬の肩の上でアキラは震える事しか出来なかった。
居室に入った途端、激情を抑えられぬとばかりに肩から降ろした小さな身体を、壁際に押しつけて覆い被さった。
獣の目に怒りの炎が燃えている。
アキラの薄い肩を掴む手を強く握ったり、開いたりして自分自身とも葛藤していたようだが、一度咆哮すると衣を引き裂いた。
「いやぁぁぁーーっ!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
277 / 1203