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愛しいひと… 20
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早朝の一段と冷え込むこの時刻。
鬣犬はふと、違和感を感じて目を覚ました。
もそもそと胸元で動くもの……
自分の置かれた、訳のわからない状況と今だ完治しない身体へ示される性的欲求……
怯えて泣くアキラを、それでも渇望するあまり裸に剥いて全身を舐め回した。
……開発され尽くした身体は素直に感じてくれるがアキラの、恐怖からくる涙は止まることがなかった。
泣き疲れて……緊張と疲労、そして体調も良くないのだろう……
気を失うように眠ってしまったアキラを抱いて鬣犬も共に横になったのだが。
全裸の身体をすっぽりと毛布に包み、なおかつ羊毛の上掛けをかけて抱き締めていた貴い天女が、その身を自ら鬣犬に押し付けてきた。
……寒いのだろうか?
頬を寄せて、ぴったりと身を添わせて、華奢な身体をあずけてくる。
その唇が肌に触れて……鬣犬は身を震わせた。
甘えるように擦りつけてくる顔を掬い取って、鼻面を押しつける。
控えめに舌を這わせていると、ふいにパッチリと、本当に突然瞼が開いた。
……蒼い、蒼い瞳が見つめている。
鬣犬は……この刻が止まればよいと……
腕のなかの貴人と、ずっと一緒に居れればよいと……叶うはずもない切ない願いに胸を焦がしていた。
突然、差し伸べられた繊手が鬣犬の首に回され、しがみついてきたアキラが落ち着く場所を探して鼻を鳴らす。
その可愛らしい仕草に胸を弾ませて抱き返してやると安心したのか動かなくなってしまう。
……期待してはいけない。
ただ寝ぼけただけなのだから、過度の期待は大きな落胆へと繋がる……
「姫君……」
この洞窟は鬣犬が、一族の緊急避難用に用意していたもので普段は誰も使っていない。
必要最低限の物資が運び込んであって、衝動的にアキラを連れ出した時点で隠れるのはここしか思いつかなかったのだが、十分な広さと何よりも洞窟内に泉があることでアキラも暫くは暮らしていけるだろうと思っていた。
「姫君……無理矢理このようなところにお連れした事、お詫びいたします。
でも、どうかこの部屋から出ないで下さい」
洗濯用の大きな桶に湯を入れて、アキラの身体を清めながらそう話しかけた。
「この洞窟は絶壁にあります。
気候もクシュとは全然違う……
どうか約束して下さい」
「うん……」
肌寒いからだろう、熱めの湯を何度も、何度も肩にかけてくれる。
身体が暖まって頬が朱く染まる頃、敷布に使う大きな布で全身を包んで褥に戻された。
いつの間に置かれたのだろうか、木をくり抜いた椀に燻製肉のスープが置かれている。
「ここには僕たちの他に誰か居るの?」
「ええ、居りますよ。だから大人しくしていて下さいね」
椀に口をつけながら頷くアキラを満足そうに見ている鬣犬。
彼はアキラを、甘く見ていた。
案の定【探検】を試みたアキラは、洞窟内で完全に迷ってしまっていた……
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